音と笑顔の魔法使い

パレードの皆さん ページ13

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「あれ、阿部ちゃん？」

「あ、いたいた。ちょっとこっち止まっててさ、パレードの整列にヘルプ出されて」


昼間のパレード前。カーキのセットアップを着た姿が見えた。確かに少し前にストームライダーが止まってると内線が聞こえていた。


「そっかそっか、じゃあこの辺りのゲストさん対応してれば大丈夫だよ」


ある程度のゲストが集まってきたので阿部ちゃんに声をかけてから私は通路に出る。


"みなさーん！こんにちはー！"



パークに流れるアナウンスに合わせて手振りをする。もう何回も聞いて完全に頭に入っているアナウンスを聞いていると、その時普通のカストさんがお掃除しているのが見えて佐久間くんのあのウインクを思い出した。



"かわいい〜！！"



効果音に合わせて、できてるか分からないけどちょっと大袈裟にウインクをしてみると目の前のJKにちょっとウケた。なんか先輩が言ったアイドルみたいにって言うのが分かってきたかもしれない。アイドル気取り？でウケを狙う路線。


その調子でダンスのレクチャーをしていると、何やら後ろの方でゲストがざわざわし始める。振り向いて携帯で動画を撮っている人もいた。


踊りながらすこーし移動して何だろうと見てみると



"あのファンカストさんキレッキレ！"

"お掃除してー！笑"



そこにはサクマさんがいた。
ゲスコンに負けないくらいキレキレのダンスを満面の笑みで踊る"ファンカストサクマ"はゲストの注目の的。


「あはは、あそこのファンカストさんいいですね〜！皆さんもご一緒にー！」


フロートがここに辿り着くまでの少しの時間でサクマさんは通路から離れた後ろの方の人を中心に楽しませてくれた。そう、ここって前の列じゃないとパレードちょっと見づらいんだよね。


もう少しでフロートが来ると言う時間。「あ！」とサクマさんは時計を見るフリをして慌て始める。そして周りの子供たちにキラン！と音を立てながらハイタッチをするとまたバイクのようにコンテナのエンジンをふかすふりをする。


ぴゅーっといなくなるかと思いきやゆーっくりと歩き始めてまたひと笑い取っていったサクマさんは去り際に私に向かって投げキッスとウインクをした。

ご丁寧に効果音付きで。



「ナンパキャラ…笑」



早速実行してきてる。さすがファンカスト。


パレードも無事に終了し、お客さんもそれぞれに散る。私も持ち場をまた回ろうとすると列整理をしていた阿部ちゃんがこちらにやってきた。

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