・ ページ33
・
そう、私はせめて最後にって。最後だけでも彼が褒めてくれたこのバレッタを付けて佐久間くんの隣にいたかった。
卒業式当日は少しのオシャレは暗黙の了解で許されていて。周りの女の子たちは相変わらず髪を巻いたり少しお化粧をしたりしていたけれど私はそのバレッタを付けるだけだった。
佐久間くんが似合うと言ってくれたあのまんまでいたかったから。
「卒業式の日も想いを伝えようとした。でも結局できなかった。迷ってるうちに気が付いたらAちゃんいなくなってて」
卒業式の日は他のクラスの友達と少し写真を撮ったくらいですぐ帰った。はしゃぐクラスのみんなの中にいたくなかったのもそうだけど、みんなの輪の中心にいる佐久間くんの姿を見ると苦しかったから。
早く忘れようとしてすぐ学校を出た。結局ずっと忘れられなかったんだけど。あれからしばらく部屋で一人で泣くくらいには忘れられなかった。
「俺ずっと後悔してた、何で言えなかったんだろうって。何で迷っちゃったんだろうって。卒業してからもずっとずっとAちゃんの事忘れられなかった。何回も追加してLINEしようとしたけど、後悔したはずなのに何もできなくて。そしたらクラスのグループからもいなくなってて。仲良かった奴らに聞いてみてもみんな知らないっていうからさ……また後悔して、悲しくなって……」
佐久間くんは何だか泣きそうな顔をしていた。私はずっと佐久間くんの中に私の存在がいたことが信じられなくて。何も言えずに目の前の佐久間くんを見つめるだけ。
「あのね、俺めめと一つ決めたことがあって」
「……何?」
「Aちゃんと思いが通じ合った方が、これを返そうって」
「え…」
「めめもね、本気でAちゃんのこと好きだった。でも俺はもう後悔したくなかった。高校の時から今までずっと持ってたなら、きっと大事なものなんだろうと思って。その大事なものを返す人になりたかったの。俺らの勝手でごめん。すぐに返せなくてごめん」
そう言って、佐久間くんはバレッタを差し出した。
「Aちゃん」
無くしたはずの星のバレッタ。宝物だった星のバレッタ。これをつけてれば、いつかまた会えるんじゃないかって。
似合ってるねって。
また言ってくれるんじゃないかって。
「ずっとずっと、あなたの事が好きでした。受け取ってくれませんか?」
449人がお気に入り
この作品を見ている人にオススメ
「SnowMan」関連の作品
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
ぽぷら(プロフ) - さくまりさん» 見覚えのあるお名前だと思ったらご本人様でびっくりしました…!書き手様からのコメントは初めてで少し恥ずかしいような嬉しいような気持ちです…お話拝見しておりました。まさか隠キャまでお読み頂いてるとは…ありがとうございます。お言葉嬉しいです! (2021年7月9日 11時) (レス) id: 0e689a64ff (このIDを非表示/違反報告)
さくまり(プロフ) - お初です。文章の雰囲気、知ってるなぁ…と思ったら陰キャさんの作者さんだったと知って納得しました。自然に風景がドラマみたいに浮かんで、言葉にリアリティーがあって、でもキュンで七夕を勝手に感じてしまいました(笑)素敵な物語ありがとうございます! (2021年7月8日 0時) (レス) id: 25f09058ee (このIDを非表示/違反報告)
ぽぷら(プロフ) - わーぉさん» こちらこそ素敵なお言葉ありがとうございます!キュンキュンしてくださったみたいでとても嬉しいです( ; ; )ほんとこんな男前に出会いたいですよね…。書く活力になります!ありがとうございます! (2021年7月7日 23時) (レス) id: 0e689a64ff (このIDを非表示/違反報告)
ぽぷら(プロフ) - ユウさん» わ!魔法の世界から来てくださって!!キュンキュンしてくださったみたいで嬉しいです(><)またノットファンタジーも書けたらなと思います!ありがとうございます! (2021年7月7日 23時) (レス) id: 0e689a64ff (このIDを非表示/違反報告)
ぽぷら(プロフ) - まぁさん» わー!キュンキュンしてくださいましたか!めちゃくちゃ嬉しいです!!ありがとうございます( ; ; )ほんっと2人ともいい男ですよね……笑 本当に嬉しい言葉をかけてくださって感激です!ありがとうございます! (2021年7月7日 23時) (レス) id: 0e689a64ff (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:ぽぷら | 作成日時:2021年7月7日 2時