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読まれてる。
今まで読んでしかなかったから、読まれる側の気持ちが初めて分かった気がした。
いいもんじゃない。
「ふっかも照も舘様も賛成だって、そうなったらもうみんな賛成みたいなもんでしょ」
「え」
「翔太は?」
「知らないけど大丈夫でしょ」
(え、俺は?まぁ反対はしないけどさぁ)
所々で聞こえてくる佐久間さんの声。きっと心の中でもおしゃべりな方なんだろうなと思うと、私も聞きたくて聞いてるわけじゃないから申し訳なくなってくる。
「今お仕事してないみたいだし。だからここに就職しませんか?」
「就職…?」
そんな私に振ってきた言葉。
顔を上げると阿部さんが微笑んでいた。
「もちろん正社員ね。あ、でも就職できない理由とかあったりする?」
「…いえ、普通に就活失敗しただけで」
「それって聞こえるせいだったりしない?」
阿部さんの優しくも鋭い声に固まってしまう。
だって、そのとおりだったから。
いや、聞こえる事が直接的な原因じゃないにしてもそれに負けてしまったから面接で落とされていたわけで。
「…面接の時に他の就活生とか面接官の声が聞こえてきちゃって。人数が多いと単純にうるさくて集中できないのと、意外と面接官も酷い事考えてたりするんで…それに負けちゃって全然話せなくて」
「あーそれはきついよねぇ…無理ないよ」
しばらくしてぼそぼそと話し出した私に阿部さんは顔を歪めた。経験があるのだろうか、今までに誰からも得る事なんてなかった共感の気持ちが彼から伝わってきて何かが込み上げてくる。
「就活生って面接だと頭フル回転してるんでいつもより心の声が多いんです。そのせいで面接官の声が聞こえなかったりなんてざらで…面接官側もよくこの学歴でうち受けたねとか心の中で罵倒してたりするんです。酷い時なんかこの子可愛いから採用とかいう声が聞こえるんでせっかく次の選考進んでもそんな所で働くかって辞退したりとかで…結果内定ゼロ」
「うわー…やだねぇそんなの」
そして佐久間さんも。
酷く悲しそうな顔をして私を見つめていた。
もちろん好意的に思って面接してくれるところもあるんだろうけど、運が悪いのか私が受けた所はどっこもそんな感じで。すっかり就活が怖くなってしまった私はそのまま就職浪人となったのだ。
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ぽぷら(プロフ) - onceさん» お読みいただき、そして温かい応援のメッセージありがとうございます(^^)頑張ります! (2021年8月2日 15時) (レス) id: 0e689a64ff (このIDを非表示/違反報告)
once - すごく面白いです!これからも頑張ってください! (2021年7月31日 14時) (レス) id: d9ffc008c9 (このIDを非表示/違反報告)
ぽぷら(プロフ) - はちの玉雪さん» ただいま帰りました!!笑 いやーお待たせいたしました。7人の探偵さん達をどうぞよろしくお願いします。笑 (2021年7月23日 13時) (レス) id: 0e689a64ff (このIDを非表示/違反報告)
ぽぷら(プロフ) - みーさん» お読みいただきありがとうございます!!さぁ、それが今後どうなっていくのか…笑 私もどうなるのか分かりません!笑 (2021年7月23日 13時) (レス) id: 0e689a64ff (このIDを非表示/違反報告)
はちの玉雪(プロフ) - おかえりなさいませ、「キミを持っている」の心境でお待ちしておりました(笑) これからの展開を、楽しみにしております。 (2021年7月22日 20時) (レス) id: ef0b5894b5 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:ぽぷら | 作成日時:2021年7月13日 22時