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人質と出会い ページ3

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(あー、だるいな。こんな会社入らなきゃよかった)


人気のない夜道。すれ違った男性から聞こえてきたのはこんなこと。こんな時間までお仕事か。少し着られている感があるスーツ姿にあぁ、新卒の同い年の人かななんて思う。

そのまま少し歩いて着いた先は公園。私のアパートからほど近い場所にあるここは私が安らげる場所だった。

夜の公園は何も聞こえない。静かで落ち着ける場所。

咲いている桜が数本の街頭に照らされている。

今は春。
私は結局どこにも就職できないまま4月を迎えた。




「…もう諦めてバイトで生きていこうかなぁ、なんて」



大学のキャリアセンターに引き続きお世話になることと、今のバイト先でこれからも働かせてもらうからって、実家に戻ることはせずに1人で暮らしている。就職できなかった娘がノコノコと家に帰ってくるのも嫌だろうし、私も気まずいし。



(ここならバレねえか……)



桜を眺めながらぼーっとしていると、少し離れた所からそんな声が聞こえた。なに、こんな時間にかくれんぼ？でもこの声は子供じゃない。低くて何だかしゃがれた声。

ふと聞こえた方を見るとそこにあった茂みが少し揺れていた。





「はぁ…逃げ足早っ」

「こっち逃げたよね？」

「たっく、ナイフ持って逃げやがったから何しでかすか分かんねえよ」





「えっ」



なんだか怖い会話を聞いてしまったかもしれない。

公園の入り口付近にに3人の男が走ってきて、誰かを探しているようなその人たちは周りを見渡している。




(あ、来た…早くどっか行きやがれ……)



「…え、やばくない？」



多分、向こうの茂みに隠れた人をあの3人の男たちは探している。さっきナイフ持ってるって言ったよね？これやばいよね？

公園の入り口とは反対方向の茂みに隠れているからか、あの人たちと隠れている人は距離がある。多分気づいてないんだろう。ちょうどその真ん中あたりにいる私が座っているベンチは木でその人たちからは死角になっている。

え、どうする。今私があの人たちにここにいまーすって言うのもおかしいし…いや、隠れたのを見たって言えばいい？でもそんなことしたら私も危険じゃない？だってナイフ持ってんでしょ？怖いって、動けないよ。



聞こえてしまうばっかりに恐ろしい事に気付いてしまった私は身体が動かなくなる。あぁ、私みたいにあの人たちも聞こえればいいのに！！

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