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ルチル* 雨の朝 ページ1

最悪の目覚めだった。
 私は部屋の窓を外から叩きつける雨音に起こされた。まだ日も出ていない時刻に、だ。
 最悪――。つくづくそう思った。窓を叩くものが愛くるしい小動物や美しい声の小鳥だったらまだよかったのかもしれない。しかし現実は元々いた世界でも中々経験したことのないようなざあざあ降りの大雨である。不快なことこの上ない。この雨音も忌々しいが、何より嫌なのはこんな早い時間に強制的に起こされてしまった事だ。でも一度目が覚めてしまったから再び寝付くこともできず、かといってこんな時間に自分のわがままで他の魔法使いを起こすわけにもいかない。
 どうしたものかと思いながら、何とはなしに賢者の書を開いてみる。この大雨で湿度もかなり上がったのだろう、しっとりとした感触になってしまっていた。でも、開いたところで何か変わる訳もない。内容は全て自分の書いたものだから特に面白いこともない。結局5分と時間は潰せず、陰鬱とした気持ちで本を閉じた。
(せめて一人でいいから起きてる魔法使いはいないのかな……)
 そう思った私は他のまだ寝ている魔法使いたちを起こしてしまわぬよう、静かに自室を出て魔法舎の廊下を歩き始めた。
 
 まあ誰もいないだろう……。そんな私の思考は部屋を出てすぐに裏切られた。
 廊下にある、大きな窓。そこに彼はいた。スケッチブックと絵筆を持ち、明るさを補うためか、小さいけれど暖かく柔らかな光を魔法で灯して、窓の外を見つめていた。

    雨の朝 2→



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作者名:レイ | 作成日時:2020年7月9日 18時

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