無自覚イケメンは救済する【東リベ】

７話 ページ8

九井一 視点





飛び降りてきたとき、バカなんじゃねぇのかと思った。

　


煙が上がってるからと嫌な予感がして駆けつけ、家の前には呆然と立ち尽くすイヌピーがいた。


赤音さんはと問えば、一人の男が入って助けてくると言ったきり戻って来てないらしい。





「ックソ、俺も…！！」



「やめろココ！んなとこに入ったら死んじまう、バカすんじゃねぇよ！！」





必死で引き留められ、振り解こうと身を捩った。あの人を失うだなんて冗談じゃねぇ。


何度も名前を呼んだ。無事でいてくれとただひたすら願っていれば、イヌピーが声を上げた。




アメジストのような目と視線が交差した。




男は空中で衝撃が少なくなるように体制を調整して地面に降りた。今の行動からして武道を何かやっていたのだろう、それもかなりのやり手だ。


いや、そんなことはどうでもいい。赤音さんを抱えたそいつに近寄る。





『一酸化炭素中毒だと思う、けど息もあるし脈もちゃんとしてる。あとは頼んだ』





立ち去ろうとする男に、イヌピーは手を掴んでアンタも病院に行くぞと言う。だが、男はふわりと笑い大丈夫だと言った。





『俺は大丈夫だから。…その人のこと宜しく、じゃあな』





するりとイヌピーの手から抜けて走っていく。


その男を追おうとしたが、救急隊員が来たことによりできなかった。




アメジストの目が酷く脳にこびりついた。

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