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━━said
彼女は、いつも使うスマホとは別の、もう一台のスマホを手にしていた。それは紛れもなく、彼女自身のものだった。
そのもう一台のスマホの通話履歴を遡り、とある人物へ連絡をする。
無機質な着信音は、3コールで通話画面へと切り替わる。
「…お久しぶりです、師匠。」
彼女はそう口にした。そして相手の返事を待たず、また一言言葉を紡ぐ。
「ちょっと頼みたいことがあるのですが。」
《君の方から連絡が来るのは珍しいと思ったら…そういうことですか。》
師匠と呼ばれたその人物は、また言葉を続けた。
《可愛い弟子の頼みですからね、聞きましょう。》
彼女はその言葉を待っていた様に口を開いた。
「一つは、今から送る電話番号のスマホの位置情報を、私のスマホにリアルタイムで送ってください。そしてもう一つ、プラーミャという人物について調べてください。」
《プラーミャ…炎ですか。…一つ目は可能です。けれど二つ目は少々お時間頂きますよ。コチラも今別の事件に巻き込まれていまして。》
「お暇なときで構いません。お願いします。」
《わかりました。……それにしても、珍しいですね。君からこんなお願いをするとは。》
師匠という人物の、少し嬉しそうなその声に、彼女は表情一つ変えず飄々としていた。
「…深い理由はないですよ。」
失礼します。そう言って、彼女は一方的に通話を終わらせた。
ふぅ、と彼女は息をつく。
いつも隣で漂うタバコの匂いがしないことに、違和感を覚えた。
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作者名:づきづき | 作成日時:2023年4月8日 12時