第7話 ページ9
貴方サイド
『タイガーさん、こんばんは！』
タイガーさんにこうしてお話をしてもらうようになってから、数日がたった。
「ああ、こんばんは」
挨拶してすぐに違和感を覚えた。
何かがいつもと違う……。
よく見ると、タイガーさんの腕は腫れていた。
『その腕どうしたんですか…？まさか…』
父にやられたのか、そう私が聞く前に、
「心配するな、身体は丈夫なんでな」
『でも……！』
そんなに腫れて痛いに決まっている……。
「大丈夫だ、今日は魚人島の話をしよう」
タイガーさんは何事もなかったかのように、いつも通り話し始めた。
「リュウグウ王国、別名、魚人島はちょうどここの真下辺り、つまり、海中にある。人魚と魚人が住む島だ」
『タイガーさんはそこで生まれたんですか？』
「厳密にいえば、俺は、魚人街という、その島のスラム街のようなところで育った」
『スラム街ってなんですか…？』
「簡単に言えば、王国に追われたものや馴染めなかった者たちの溜まり場さ」
へぇ…そんなところがあるんだ。
「魚人島は海賊たちが新世界にいくための唯一のルートだ。だから、魚人島には人間もたくさんいる」
『海底なのに人間は魚人島で息できるんですか…？』
「魚人島は巨大なシャボンのの中にあるからその心配はいらない。一部シャボンがない場所もあるが、その時はサンゴから出るシャボンを頭にかぶるんだ。そうすれば呼吸ができる」
『シャボンの出るサンゴ…』
全く想像がつかない。
タイガーさんが教えてくれることは本当に私の知らないことばかりだ。
『いつか行ってみたいです…魚人島…』
「……ここを出れたら連れてってやってもいい」
『本当ですか！？』
そんな日が来るといいなぁ…。
＊＊＊
「そして、その時海賊たちから島を守ってくれたのが、白ひげという海賊だ。その海賊は…………今日はここまでだな。そろそろ時間だ」
気づけば鉄格子の隙間から光が漏れていた。
『そうですね、じゃあ帰ります。その白ひげとかいう海賊さんの話はまた今度聞かせてください！タイガーさん、ではまた』
「ああ、おやすみ」
私は牢を後にした。
タイガーさんと話せるのは見張りの人が居眠りするたった数十分だけ。
でも、この時間だけがこの場所で一番……いや、唯一、楽しいことだ。
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作者名：いろぺん | 作成日時：2019年3月10日 11時
