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9話 ページ9

 
 
 
想い人の死。好意を伝えられぬまま、二度と喋れない、会えない、見てくれない。

甘露寺さんの事を好きだって、知ってた。見掛ける時は、毎回2人一緒だったから。その度に苦しくて、辛かった。

同い年の甘露寺さんに敵うモノは1つも無い。容姿も、実力も、魅力も。少しでも近付ける様努力したけど、辿り着けなかった。

せめて、告白しとけば良かった。

こんな思いするなら、いっそ戦いに巻き込まれて死んだ方が良かったのかな…

ふと伊黒さんの手を見た。



『頼む、もう誰も死なせたくないんだ…』



私の命を救ってくれた、あの手。
必死に鍛練した証拠の傷が痛々しい。小さいけど、温かくて安心した。

沢山の人を守ったんだね。

救ってくれた命を、粗末に出来ないよ…



「伊黒さん、ありがとう…」



そっと2人に近寄り、微笑んだ。
伊黒さんの手を取って優しく握る。



「大好きです、伊黒さん」



手を離し、涙を拭いながら立ち上がった。

その場から離れるため、歩き出す。
一度も振り返らなかった。



貴方が幸せになれて、私は嬉しいです。
 
 
 

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作者名:紅葉 | 作成日時:2021年1月9日 17時

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