Mermaid【ファンタビ長編】

銀行 ページ6

(と、いうことはさっきの黒い影は……)











もしかして、と人混みの足元を注意深く見回す。

すると、チョロチョロと素早い動きで、立ち止まる人のバッグやポケットを移動する黒い影を見つけた。




あれはやっぱり私のお気に入りでもある魔法動物……



『ニフラー！』
「ニフラー！」



思わずその生き物の名前を口にする(実際は口を動かしただけだが)と、同じようにニュートもトランクから逃げ出したニフラーに気付いたようだ。
同時にニフラーを見つけたことで、運良く私が名前を口に出したことには気付かれなかった。



ホッとしたのもつかの間、ニフラーは全く止まることなく人から人へとどんどん移動していく。

このままだと銀行に入ってしまうのも時間の問題だ。



(こういうのって下手なことして話を変えないほうがいいのかもしれないけど、いざその場にいたら放っておけないわ……)










隣で同じように動き回るニフラーを目で追っていたニュートは、なぜか演説をしていた女性、メアリー・ルー・べアボーンにつかまっていた。
ニュートはニフラーの向かう先に銀行があることに気付くと、みるみる焦りだしたのがわかる。


(映画見た時も思ったけど、何でここで話しかけられるかな……)


ふぅと一つ息を吐いて、私は軽くニュートの肘をつつく。
それに気づいた彼に『あの子は私が捕まえてあげる』とニフラーを指差して伝えると、すぐさまニフラーめがけて走り出した。







私のように小柄な方が人混みは抜けやすい。
何度も人にぶつかりそうになりながら、ニフラーが銀行に入る前になんとか捕まえられそうな距離にまで近付くことができた。



(いける……！)



そう思って柱の陰に隠れようとするニフラーに手を伸ばした。
が、寸でのところで伸ばした手をすり抜けられる。

(え……！？)

そのままニフラーを取り逃がした勢いで、私は体勢を崩してしまった。
こけそうになり、硬い階段にぶつかりそうになった私は思わず目を閉じた。

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