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私たちが初めて会った日のことは
今も鮮明に覚えてる
私は小さい頃に吉原に売られてきた
ここに売られてきた限り、もう帰る場所はここしかない
ならば、この吉原１の花魁になってやろうと思った
振袖新造にまで登り詰めたある日の事
私は桜の木下で、座って鼻唄を歌っていたとき、ある青年が声をかけてきた
「綺麗な音色だな。歌詞はないのか？」
「…あるでありんすよ。♪♪〜」
彼は桜の木の上にいて、ふわりと下りてきた
「あんた、名前は？」
「さづきでありんす。まだ名はもらっておりんせん」
「そうか。俺は朔夜だ」
「朔夜…さん。いい名でありんすね」
「あんたは吉原の新造か？」
「あい。大見世にある妓楼の新造でありんす。」
「なぁ、俺といるときは郭言葉じゃなく普通に話してくれねぇか？」
「！、わかりました。」
「やっぱそっちの方が合ってるぜ」
これが始まりだった
武家育ちである彼は、色々な話を聞かせてくれた
外の世界のことを話してくれたり、そとの世界にしか売ってないお菓子も持ってきてくれた
本当の笑顔を忘れた私にとって、幸せな時間だった
意地悪な姉女郎達のいじめにも耐えられた
桜の木が枯れてしまっても、私達は木下でお話をした
雨の日の時は甘味処屋さんで団子を食べながら話した
絶対に会わない日が無いほどに、毎日のように会っていた
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作者名：＊ビターチェリー＊ | 作成日時：2019年6月24日 14時
