. ページ44
あまりの冷たい表情と冷たい声にどくん、と心臓がなった。背中はすーっと冷えていくし指先も冷えていく感覚がした。
｢あ、なにも……｣
パッと目を逸らして顔を背ける。
冷たくなっていく指先に反して目元がじわりと熱くなる。
だめだ、泣くな。
そう思えば思うほどぽたぽたと手元に涙がこぼれ落ちる。
あんな目で見られたことない。まだ怒ってるんだ。
リビングでいたのはもしかして別れ話でもするつもりだったんだろうか。
止まることない涙が視界を奪っていく。
｢Aちゃん｣
宏介さんが私の名前を呼ぶ。
さっきの声とは違う、少し弱々しい声。
手のひらで顔を覆う。こんなみっともない顔、見られたくない。
｢宏介さん……。｣
｢……ん？｣
｢私の事、もう……嫌いになっちゃった？｣
突然腕を掴まれて顔から手が離れる。
さっきよりも近い距離に見える宏介さんの顔。
目じりが下がっていて困っているような、悲しんでいるような、辛そうな表情。
どうしよう。こんな顔見たいわけじゃない。
｢嫌いになれるわけないじゃん。｣
｢え？｣
｢嫌いになれるわけないよ。
俺Aちゃんのこと大好きだもん。｣
腕を離して、私の頬を手のひらで包み込む。
目元を親指で拭ってため息をつく。
｢もっと早くに謝らなきゃって思ってて、けど俺めちゃめちゃ頑固だから顔合わせる程何も言えなくなっちゃって。
今日こそは、ってここで待ってたのに酷い態度とってごめん。｣
ああ、よかった。
まだ嫌われてないんだ。まだそばに居ていいんだ。
｢宏介さ、ん。ごめんなさい。
ほんとにごめんなさい。｣
止まることの無い涙に喋ることすらままならなくなる。
視界が暗くなって宏介さんの匂いが強くなる。
｢俺こそごめんね。こんなに泣かせてほんと嫌になる。
これからもそばにいて。｣
優しく響く宏介さんの声。
背中に手を回すと、さっきよりも強い力で抱きしめてくれる。
｢私を離さないでください。｣
当たり前だよ、と声がして宏介さんが離れる。
｢絶対この手、離さないから覚悟しておいて。｣
左手の指に彼の長い指がするりと滑り込んできて、強く握りしめられる。
【絡めた指に誓って】
(お腹すいた。)
(ふふ、久々に2人で食べようか。)
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 66人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
るう＠邦ロックとetc(プロフ) - うわあ………尊い………めっちゃすきです………m(_ _)m (2020年10月3日 7時) (
レス) id: d47d9f7e3c (このIDを非表示/違反報告)
裕(プロフ) - まるこさん» ありがとうございます。ちょっと過激すぎたかな？と思いましたが楽しんでいただけて嬉しいです。第2弾、終わったばかりですが第3弾が始まりました。またお付き合い頂けたら嬉しいです。 (2020年4月27日 20時) (レス) id: af8940d8bd (このIDを非表示/違反報告)
裕(プロフ) - 零さん» ありがとうございます。第2弾、終わったばかりですが第3弾が始まりました。またお付き合い頂けたら嬉しいです。これからもよろしくお願い致します。 (2020年4月27日 20時) (レス) id: af8940d8bd (このIDを非表示/違反報告)
裕(プロフ) - あちゃさん» ありがとうございます。第2弾、終わったばかりですが第3弾も登場しております。またお付き合いください。 (2020年4月27日 20時) (レス) id: af8940d8bd (このIDを非表示/違反報告)
まるこ(プロフ) - 第二弾お疲れ様でした！どのお話も楽しく読ませていただきました！（最後のお話私的に最高すぎました、、、！）第三弾も楽しみにしていますので、無理せず更新していただけると嬉しいです！ (2020年4月27日 2時) (レス) id: 5234202a18 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：裕 悠 | 作成日時：2020年4月8日 18時
