呼吸さえも忘れるほどに ページ26
初めの頃はとっても淡白な人だった。
束縛もしないし、されるのも苦手。
自分の考え方もスタイルもちゃんとしてるからそれを貫き通すところがある。
まさか付き合えるとも思ってなかったし、付き合っても追いかけるだけの恋愛だろう、と最初から覚悟は出来ていた。
こうなったら全力で追いかけてやる!!!とさえ意気込んでいた。
けど……
「斎藤さん、ちょっと離れてください。」
「なんで?疲れちゃった?」
私は斎藤さんの膝の上に横座りになり、腰をがっしり掴まれた体制のままもう10分ほど経とうとしている。
斎藤さんの家で過ごす久しぶりの休日で、色んなバンドのライブDVDを見漁ることになっていた。
私は床に座って、斎藤さんはソファに座ってみていたけど、ちょっと冷蔵庫に飲み物を取りに行こうと立ち上がるとそのまま腰を掴まれ、膝の上に乗せられている。
「いや、わたし飲み物取りに行きたくて立ち上がったんですけど。」
「え?俺の傍に座りたくてこっち来たんじゃないの?」
ん?っと上目遣いをして微笑んでくる斎藤さんはこの世で1番かっこいいと思う。
「なんて都合のいい……。
あとその顔はずるいですよ!何も言えなくなっちゃいます!」
私の言葉に満足したのか、腰に回した手の力を緩めずにテレビに視線を移す。
「わたしちゃんとした姿勢で見たいです。」
「じゃあ正面向きなよ。」
……これは離す気ないな……。
「斎藤さん、離してください。」
「いいの?俺またちょっとしたらツアー出るよ?
嫌でも離れなきゃいけないのに。」
淡白だと思っていた斎藤さんがこの状態だ。
恋人にはこんなに甘えるんだな、とますます好きになったけどこの状態はさすがに頂けない。
「隣に座りますから、お願いします。」
その言葉にしばらく考えたあと、ぱっと離して私を自分の隣に座らせた。
「てゆーかまた斎藤さんだって。
宏介って言ったじゃん。」
「ずっと斎藤さんだから、斎藤さんの方が言いやすいんですよ。」
「言いやすいならいいけどさ、いつか宏介って呼んでね。」
私の頭をぽんぽんっと撫でると目じりがくしゃっとなるくらいの笑顔を見せてくれる。
「……斎藤さんってこんなに彼女にデレる人だったんですね……。」
え?、と目を大きく開く彼。
「俺、Aちゃんにしか甘えないよ。」
当たり前かのように飛び出てきた言葉に違和感しか感じない。
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裕(プロフ) - 夕凪さん» コメントありがとうございます。とても嬉しいお言葉に励まされました。夕凪様の小説も読ませて頂きたいと思います。そして続編、少しずつですが書いていこうと思いますのでまたよろしくお願いします。 (2020年4月8日 18時) (レス) id: af8940d8bd (このIDを非表示/違反報告)
夕凪(プロフ) - はじめまして、こんにちは。小説通して、とても楽しませて頂きました。わたしも勝手ながら夢小説を書いているのですが、情景・心理描写など参考になる部分が多々ありました。ひとときの夢をありがとうございます。もし可能でしたら…続きを楽しみにしています。 (2020年4月8日 14時) (レス) id: e6f9b067c6 (このIDを非表示/違反報告)
裕(プロフ) - 零さん» コメントありがとうございます!私の中の斎藤さんイメージで書いているので自身は楽しく書かせていただいております。楽しんで頂けてとても嬉しいです。これからも頑張ります! (2020年4月2日 20時) (レス) id: af8940d8bd (このIDを非表示/違反報告)
零(プロフ) - 第一話から拝見させて頂いてます。色っぽくてドキドキする展開にいつもときめいており、更新されてるとわくわくしながら読んでいる自分がいます。これからも応援させて頂きます、頑張ってください! (2020年4月2日 19時) (レス) id: e30a93ed77 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:裕 悠 | 作成日時:2020年3月27日 11時