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「うおおお、ちっちゃあ……」

しばゆーが可愛いねえ、と我が子のほっぺたをつつく。派手な見た目ながら赤ちゃんを抱っこしてもさまになっているのは、やつが2年前からパパをやっているからであろう。

「Aちゃんお疲れ様。3,500g超えを下から出してるの本当にすごい」

『あやなんだってすごいよ。私会陰の傷でも痛かったのに帝王切開の痛みに耐えたじゃん！』

お母さんな2人はしばゆーが抱っこする朝陽を囲む。

『しかもあやなんは陣痛も長い時間耐えてたでしょ？私は1日も耐えられん』

あやなんはかっこいいんだよ、とAは頭を撫でた。

女性は傷を負って母になる。父親学級に参加した時、産科の医院長が語っていた。どんなに体調が悪くても傷を負うことになっても、Aは出産まで諸々のトラブルを耐えた。

入院して本当はずっと寝ていたいくらい体調が悪いのに、Aは朝陽がお腹で育つ様子を写真や動画に残していた。

“ママはあなたに会うために耐えるよ……。来年の春、元気に生まれてきてね……！”

青白い顔色、唇にも血色がない。普段はツヤツヤな肌が荒れている。今にも消え入りそうな脆さだ。そんな状態でもAはビデオカメラを回していた。

“早く会いたいなあ……”

Aには秘密にして、とお義母さんに見せてもらった動画を見ながら、俺は涙が止まらなかった。その日俺はAをギュッと抱きしめて離さなかった。

“えっ、何なに！？なんで亮くんは泣いとるの！？”

“……っ、もう苦しい思いさせんから、ずっといてほしい”

“もちろんそのつもりだけど……、えっ、本当に何があったの？変な夢でも見ちゃった？”

Aは俺との新しい命を産むためなら傷つくのを厭わなかった。

俺とAには朝陽を守る義務がある。でも俺には朝陽と同じくらいAを大切に、守る覚悟がある。

『お互い頑張ったよねえ……、我が子に会うために』

「うん。つわりも出産も頑張った」

母になったAは産後休む間もなく、寝不足を抱えながら朝陽の世話に奔走する。でもAの体を回復させなければならない。

柴田達が帰り、朝陽はぐっすり眠っている。我が子はよく寝る親孝行息子だ。

「A、少し寝て来たら？」

『……そうしようかな。6時になったら起こして？』

Aはあくびをして寝室へと入った。