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BLUE ページ4

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『もう！強く蹴ってないやん！』

窓際の端っこでクラスメイトの女の子がほっぺたをプクッと膨らませ、柴田に対抗する。ぶりっ子なのか癖なのか俺には分からないけれど、もう随分と前から気になっている存在の1人だ。

「まーた亮くんが鷲尾見とる」

ギクッとした。増田に指摘されていけない、自分にはお付き合いしている彼女がいた、と現実に引き戻された。

「そんなに鷲尾と話してえの？」

「……そりゃ、ね」

何度も紹介してやる、と夢丸や徹也が胸を張った。でも毎回2人が連れて来るのは同学年の別の女子だった。

浅川もその中の1人だ。鷲尾ちゃんの同じ地元の仲良しで夢丸とも懇意にしている、との触れ込みで紹介された。いい子だし面白い。でも俺が知りたいのはその隣にいる小柄な女の子なんだけど……

「俺暴力しないしそこまで怖くないと思うんだけどなあ……」

嫌われる事には慣れた。人間色んな感性を持っているし、俺をよく思わない奴らもいる。

鷲尾ちゃんも心の準備ができていないからまた今度、とオブラートに包んで本当は嫌いなんじゃないか。最近はそう感じている。

「鷲尾ちゃん。亮くんは腹黒そうだし何考えてるか分からんから怖いんだって」

「分かんねえ」

腹黒そうなのは辛うじて理解できるとして、自分ほど単純な人間もいないはずだ。表情に出やすいと思う。

嫌われる事には慣れた。でも何も感じない訳じゃない。彼女はやんわり断っているつもりでもその柔らかさが鋭い刃物になり、心に切り傷を作る。

「鷲尾ちゃんと話してみたいんだけどなあ……」

スッと紙で指を切ってしまった時のようなそんな痛みがする。

「でもチャンスやん」

「チャンス？」

増田はちょけた笑顔で頷いた。

「同じクラスになったって事は鷲尾と話す機会が必ずあるやん」

「確かに」

「そこきっかけで鷲尾と絡むんだよ！俺は優しくてかっこいいイケメンですって伝えてみろ、すぐ仲良くなるから」

「言えるか！」

冗談でも言えない。グーで肩をパンチすると痛っ、と軽く交わされた。ガタイのあるラグビー部はビクともしなかった。

鷲尾ちゃんの席を見れば、既に浅川も柴田も掃けてそれぞれ別のクラスメイトと挨拶や会話を楽しんでいる。鷲尾ちゃんはといえば生真面目に勉強を頑張っている。

俺はあの子と仲良くなれるのだろうか。