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“亮くんの部屋もできる限り掃除しとくね！”

これが全ての元凶だったのかもしれない。絶対にバレない場所に隠してこっそり読んでいたはずの……、父親向けの育児本にどうしてAの文字が書かれているのだろうか。

“性別は男の子だよ♡”

“足が浮腫むのでマッサージしてほしいです”

“明日はパスタが食べたいな”

ものすごく大切な報告から緩いおねだりまで、いくつもAの丸っこくて角のある文字が紡がれている。

“クリスマスはイルミネーションと水族館に行きたい！”

「A、話があるんだけど」

『んー？』

お風呂上がりでほかほかのAに問いかける。

「これ、いつの間に見つけたの？」

手元の本を見せればAは満面の笑みを浮かべた。

『これ？先週！』

「待って。結構前から知ってたの！？」

顔に血が上る。この1週間、Aが発見してニヤニヤしているとも知らず、俺はAが寝た後隠れて読んでいたらしい。

「バレないように読むはずだったんだけどなあ……。バカだせえやん俺」

『そうかな？嬉しかったよ！』

屈託のない笑顔が俺を見上げる。

『でも全然気づかんから文字書いちゃった』

へへっ、と微笑んで冷蔵庫から水を取り出したAは、横腹に手を当ててごくごくと水を飲む。

『赤ちゃん、男の子だって』

大きくなったお腹に男の子がいる。自分はAそっくりな女の子がいるんじゃないか、なんて想像していたけれど、現実は真逆だった。

「男の子かあ……」

『柴田が当てやがった』

「経験者は分かるのかな」

性別が発覚しより一層そのお腹に愛おしさが増す。男の子なら一緒にサッカーをしたり走ったりして沢山遊べるのだろうか。身長は高くなるのかな。顔はAに似てくれたら嬉しい。でも少しだけ自分にも似ていてほしいな、なんて想像が膨らむ。

『赤ちゃん、絶対亮くんを待ってたんだと思う』

「待ってた？」

『今までずっと背中向けとったり大事なとこ隠してたの』

シャツワンピースタイプのマタニティーパジャマにレギンスを履き、足元はモコモコのルームソックスで覆う。お腹が目立つように布を押し付け愛おしげにお腹を見つめる。その眼差しが暖かい。

『おチビくんはパパ大好きだね！』

Aは嬉しそうにママも大好きなんだよ、と語りかけた。