＊＊＊ ページ5
.
言いたいことは沢山ある。
Aちゃんがいない東海オンエアがどれだけ覇気がないのか、視聴者さんに元気がないと心配されている現状、……亮くんのロック画面とホーム画面は時が止まっている。
「Aちゃん、せっかくだから連絡先教えてくれん？」
全てを押し殺し、僕は彼女に提案した。僕で良かったらAちゃんを支えたい。僕の先輩としてのお節介だ。
『いいよ。他のメンバーに漏らさんようにしてくれたら』
「もちろん」
LINEアプリを開いてからAちゃんのスマホを奪い、ふるふる機能を使って友達追加する。LINEの新しい友達欄にはAというユーザーが表示される。
アイコンは髪を切った時に撮ったであろう横顔の写真だ。
「今度は家も教えてね？」
『家は安城の実家だら。ざわ先輩も知っとる』
「あの家か！ 了解！」
意外と変わっていなくてよかった。Aちゃんが元気でいてくれたのをこの目で確認できたのも安心している。
「また遊びに行かせてね？」
『うん！ 体調いい時は一緒にご飯行ってね？』
「もちろん。懐妊祝いしなくちゃ」
Aちゃんはありがとう、と嬉しそうに微笑んだ。
「突然引き止めてごめんね。お母さんに電話しときん？」
『うん！』
「あ、あとこれ」
Aちゃんに1枚の髪を渡す。明日のイベントの関係者席チケットだ。
色々あったとはいえ東海オンエアの今を作る礎になってくれた彼女に、今の僕達の姿を生で見てほしい。
『いいの？』
「もちろん。体調が許せばだけど。もし大丈夫そうだったら人目がつかない席を準備しておくね？」
『ありがとう……、行けそうなら行くね』
本当ならこのイベントにはAちゃんも出演する予定だった。
妊娠による脱退……、いや、活動休止だ。僕達は音信不通になって本人を交えた話し合いをすることができなかった。何かの弾みでまた出会い、復帰を希望したら……
Aがいつでも戻って来れるように、と亮くんが譲らなかった。譲らずとも他のメンバーも同意だった。
Aちゃん、君は思っている以上に愛されているよ。
お母さんの元へ戻る後ろ姿を見送る。ショートカットは嫌だ、と言い切ったAちゃんが髪の毛をバッサリ切る。彼女なりのケジメだったのだろうか。
僕は早くも抱えた秘密を誰かに伝えたい気持ちになった。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 374人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「オリジナル」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
マイタケ - すみません、誤字しました。写真→投稿です、、、 (2021年2月20日 22時) (
レス) id: ae4c543280 (このIDを非表示/違反報告)
マイタケ - はじめまして。はじめてウラツクの写真で涙を流したのがこの作品です。これからも応援してます！ (2021年2月20日 22時) (レス) id: ae4c543280 (このIDを非表示/違反報告)
あおやなぎ(プロフ) - しげさん» こちらこそ読んでくださってありがとうございます！ 毎日コツコツ連載していきますので、楽しみにしていてください！ (2021年2月3日 20時) (レス) id: 098b1a6f9b (このIDを非表示/違反報告)
しげ(プロフ) - はじめまして！楽しく、そしてドキドキしながらお話し拝見させて頂いております。続きが気になってドキドキしております！更新楽しみにしてます^_^応援してます！ (2021年1月31日 1時) (レス) id: 8e9027bcbe (このIDを非表示/違反報告)
あおやなぎ(プロフ) - 明莉さん» 返信遅れて申し訳ございません！ ありがとうございます、頑張ります(^^♪ (2021年1月27日 3時) (レス) id: 098b1a6f9b (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：あおやなぎ
| 作成日時：2021年1月19日 20時
