BROWN ページ3
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「Aちゃん……?」
その場を去ってすぐ、小柄でぽっちゃりな男性が私の所へ走ってくる。独特の高い声に私と同じくらいの身長。
『ざわ先輩……』
身重で走れない私はあっという間にざわ先輩に引き止められた。
「Aちゃんだよね?」
『お久しぶりです……』
バイトがきっかけで出会った1つ上の先輩。学科こそ違ったものの、大学が一緒でお世話になった。私が東海オンエアに入ったのはざわ先輩と徹也の誘いがきっかけだった。
「A、お母さんお茶してくるから金澤くんとお話しときん?」
『えっ』
「金澤くんにならお話してもいいと思うよ?」
突然のことで頭が追いつかない。挨拶もなく突然辞めたのに、今さら何を話せばいいの……?
「すみません、Aちゃん借りますね!」
「よろしく! あ、走らせないでね!」
「了解でーす」
あまりにも怖い。背筋がゾッとする。
「Aちゃん、そんなに怖がらないでよ」
『いや、だって、聞きたい事沢山あるでしょ……?』
どうしてここに居るのか、今どこで何をしているのか。突然辞めた理由もざわ先輩は納得していないと思う。
「もちろんだよ。聞きたいことは山ほどある」
ざわ先輩は私のお腹に目をやった。
.
明日、東海オンエアと水溜りボンドが合同イベントを開催する。当日は会場だけでなくアニメグッズのお店でもグッズが買えるようになっていて、オープン前に僕はトミーと一緒に挨拶に来ていた。
夕方からはコラボ動画の撮影が入っている。急いで岡崎に戻らなきゃなと思っていた。
「あの人ファンかな?」
トミーに促されて入口を見るまでは。
ベージュのニットに黒のデニム、ヒールの低いパンプスを履いたハンサムショートの女性。ファンだと思ったけど違う。
「楽しみにしてくれるんだなあ」
感慨に耽るトミーとは反対に、僕は驚いていた。
……Aちゃんがどうしてここに? 姿は変わった。でもAちゃんにしか見えない。
「トミー、今から1人で帰れる?」
「えっ、何で?」
できるだけ平生を装って問いかける。
「買い出しの用事思い出した。お金は渡すからタクシーか電車で帰ってくれない?」
「別にいいけど、えっ、何なに」
「いいから気にしないで!!」
押し出すようにトミーを追い出し、僕は裏口から入口へ全速力で走った。
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マイタケ - すみません、誤字しました。写真→投稿です、、、 (2021年2月20日 22時) (レス) id: ae4c543280 (このIDを非表示/違反報告)
マイタケ - はじめまして。はじめてウラツクの写真で涙を流したのがこの作品です。これからも応援してます! (2021年2月20日 22時) (レス) id: ae4c543280 (このIDを非表示/違反報告)
あおやなぎ(プロフ) - しげさん» こちらこそ読んでくださってありがとうございます! 毎日コツコツ連載していきますので、楽しみにしていてください! (2021年2月3日 20時) (レス) id: 098b1a6f9b (このIDを非表示/違反報告)
しげ(プロフ) - はじめまして!楽しく、そしてドキドキしながらお話し拝見させて頂いております。続きが気になってドキドキしております!更新楽しみにしてます^_^応援してます! (2021年1月31日 1時) (レス) id: 8e9027bcbe (このIDを非表示/違反報告)
あおやなぎ(プロフ) - 明莉さん» 返信遅れて申し訳ございません! ありがとうございます、頑張ります(^^♪ (2021年1月27日 3時) (レス) id: 098b1a6f9b (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:あおやなぎ | 作成日時:2021年1月19日 20時