RESTART

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楽屋に戻ると開演前の準備に入ったのか誰もいなかった。気まずい空気になってしまったけれど、イベントが始まればテンションが上がっていくはずだ。


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長かった1日も気づけば最終盤までやってきた。ラスト公演なのもあり、水溜りボンドと東海オンエアのメンバー全員がそれぞれ挨拶をする。

イベント実現に向けて尽力したトミーがカンタに称えられ涙した。東海オンエアはいつも通りふざけたり弄ったりしつつ、それぞれのカラーを出して一言添えていた。



「皆さん、今日は見に来てくれてどうもありがとうございました！」


りょうくんの番がやってくる。晴れやかな笑顔を見ながら会場を見渡す。隣で見守っていると、にわかにりょうくんの目の色が変わった。東海オンエアの“りょう”から福尾“亮”に戻ったような、そんな雰囲気だ。



「……僕からは、活動休止中のメンバーについてお話させてください。本当なら今日、彼女もこのイベントに出演するはずでした」


会場がザワつく。他のメンバーも皆、嘘だろ、と焦り出す。ただ俊光を除いて。



「でも夏に入って連絡が途絶え、今も僕達は、僕は彼女の行方を探しています」


まっすぐに見つめる先にはトップシークレットにしたはずのAちゃんの席がある。



「体調は良くなった？ Aは今、心から笑っていますか？ ちゃんと食べて寝て、元気に1日を終えられているか心配です。
もし元気になったらまた僕の前に現れてほしい。俺、泣き虫だから泣いて抱きしめると思うけど、笑って受け流してほしい。……俺は、ずっと、Aが好きだよ」



キャーっと悲鳴が響いた。噂を認めたような告白を、Aちゃんはどんな気持ちで聞いていたのだろうか。

カフェで話をした昨日の昼、質問に瞳を揺らした彼女を思い浮かべる。



「っ、これだからイタリア人は！」


「くっそお！ イケメンかよ！」


しばゆーと泣きかけのてつやが気丈に振る舞う。亮くんの目から一筋の涙が流れていた。イケメンじゃない、と頬を拭ってまた微笑む。

そっと席を見ればこれもまた涙を流しているAちゃんがいる。



「僕と彼女はファンの皆さんが思っている関係でした。今まで隠してきてごめんなさい。でもAを中傷するような事があれば、僕が許しません。1番大切な人なのでよろしくお願いします」


りょうくんは深くお辞儀をした。

♯♯♯→←BROWN

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