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第3部開演までの自由時間、気分を上げるために音楽を聴く。人目がつかない場所で散歩でもしようか、とワイヤレスイヤホンを装着し、音楽を流して廊下を歩く。
……今流れているのはAがよく聴いていた恋愛ソングだった。
“片想いの時に聴いてた曲ってやたら耳に残ってるんだよね……”
“亮と付き合う前の話か?”
“うん。大学入ってすぐにまさか亮くんから電話来るなんて思わんかったなあ。私の青春”
亮は高校時代からAを好きだった。Aも高校時代から亮を好きだったけど、その時期はAが早かった。
“ねえ鈴木、あの長身の優しい人誰……?”
“あいつ? 陸上部の福尾だよ。ああ見えて俺らと同い歳”
“へ!? 同い歳!?”
この瞬間、彼女は分かりやすく目を丸くして次第にニコニコし始めた。
亮はその見た目と人たらしな性格で女子達を女に変えてきた。Aもその1人だったけど、Aは亮を男子から男に変えた。
“ねえ俊光、あのクラリネット吹きの女の子って文系理系どっちだろう?”
“鷲ちゃん? あいつ理系だげ”
2人とも人懐っこい性格なのに互いに関わろうとすると奥手を極める。
早く付き合って楽になればいいのに、そもそもどっちかが喋りかければ会話が弾むのに、ともどかしさでいっぱいだった。
「スーパースターとしみつ様が出て来たら大騒ぎになるんじゃねえの?」
「いや意外とバレんぞ?」
トミーに弄られながら非常口へ向かう。すると、とある会議室からボーイッシュでお腹がふっくらした女性が出てくる。
「あ、昨日見かけた女性だ」
「あの人か、虫がナンパした……」
目が合い、互いに固まる。
「……え、A?」
「Aちゃん?」
『あはは……』
やっとかっと声を発すると、彼女は苦笑いをして再び室内に戻る。
「ちょい! 逃げんなよ……」
鍵をかけられそうになったけど間一髪でこじ開け、中に入った。
“この会場でAの匂いがした”
フラッシュバックする。……これは愛の力とやらなのか。亮は匂いだけで彼女の存在に勘づいた。嘘だと思った。でもAはここにいる。
「来とったんか」
『……ざわ先輩に誘われた』
数ヶ月前は凹んでいだお腹は見違えるほどに膨らんでいる。虫さんと夢丸が有耶無耶にした理由がそこにあるのは、想像に難くなかった。
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マイタケ - すみません、誤字しました。写真→投稿です、、、 (2021年2月20日 22時) (レス) id: ae4c543280 (このIDを非表示/違反報告)
マイタケ - はじめまして。はじめてウラツクの写真で涙を流したのがこの作品です。これからも応援してます! (2021年2月20日 22時) (レス) id: ae4c543280 (このIDを非表示/違反報告)
あおやなぎ(プロフ) - しげさん» こちらこそ読んでくださってありがとうございます! 毎日コツコツ連載していきますので、楽しみにしていてください! (2021年2月3日 20時) (レス) id: 098b1a6f9b (このIDを非表示/違反報告)
しげ(プロフ) - はじめまして!楽しく、そしてドキドキしながらお話し拝見させて頂いております。続きが気になってドキドキしております!更新楽しみにしてます^_^応援してます! (2021年1月31日 1時) (レス) id: 8e9027bcbe (このIDを非表示/違反報告)
あおやなぎ(プロフ) - 明莉さん» 返信遅れて申し訳ございません! ありがとうございます、頑張ります(^^♪ (2021年1月27日 3時) (レス) id: 098b1a6f9b (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:あおやなぎ | 作成日時:2021年1月19日 20時