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「確かに、正式な指導者ではなかったのかもしれんが、Aくんの射はどちらの流派でも見事なものじゃとわしは思う。それはAくん自身の努力は言わずもがな、良い師の存在も大きかろう」
トミー先生の言う通り、上達には師匠のレベルも影響すると思う。雅貴くんに正面で教わるようになってから、自分でもまともに引けるようになってきたなという実感があったから。
それまで教えてくれていた湊や愁のレベルが低いという意味じゃない。でも、あの2人は先生というよりは一緒に弓を引く仲間という感じだ。ていうか普通に友達だし。
「それで、流派変えに至る経緯を聞いてもよいかのう?」
もちろん無理にとは言わんが、とトミー先生は続けた。
「あー……先輩と、その……疎遠になってしまって。それで、一緒に斜面で引ける人も指導者もいなくなって、1人で続けるのはちょっと難しい気がして」
「そうじゃったか……」
「あ、いや、ケンカしたとかじゃないんですけど。なんか、家庭の事情? っぽかったんで、あんまり詳しく聞いてないんです。ちょうどその頃に雅貴くんと知り会って、正面でも引くようになりました」
でも、せっかく教えてもらった斜面を忘れたくないから、今でも練習は続けていた。
先輩の射を、思い出しながら。
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作者名:三宮 | 作者ホームページ:https://alicex.jp/riiiiidoooosog7/
作成日時:2023年4月1日 21時