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「……雅貴くん、今ちょっとめんどくさくなったでしょ」
「えっ。……なんでわかったんだ?」
「顔に書いてある。いいよ、段があってもなくても、弓は引けるんだし」
私もめんどくさくなってきた。段位のことを言わなかった理由はもう話したし、今日のところは雅貴くんも目的達成のはず。
「それで、もう俺に話していないことはないな?」
「え……うん、多分」
「本当だろうな?」
「うん。ていうか、何を話しておけばいいの?」
「……そう言われると難しいな。実は弓歴10年でした、とか」
「ふふっ、なにそれ、普通に中学からだよ。なんかあったらすぐ言うのに」
雅貴くんもテキトーに喋り始めたし、もう気を抜いていいだろう。
……と、話を切り上げるつもりでいたけど、1つ忘れるわけにはいかないことがあった。
「あ――1個だけあった。言ってなかったこと」
「なんだ?」
「私、もともと斜面打起こしでやってた」
「……」
雅貴くんの手からみかんが落ちた。
「……お前、その弓歴で審査3回受けて、流派変えまでしてるのか……?」
どんな人生だ、と雅貴くんは頭を抱えている。
「いや、ちゃんと理由があるから! 斜面は、その、教えてくれる人がいなくなったから続けられなくなっただけで……」
このへん、雅貴くんには詳しく話したい内容じゃないからはしょるけど。
「正面で引き始めたのは、雅貴くんと知り合う少し前からだよ。湊と、湊の幼馴染の子に教わってた」
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作者名:三宮 | 作者ホームページ:https://alicex.jp/riiiiidoooosog7/
作成日時:2023年4月1日 21時