魔都と呼ばれるその理由。 ページ12
俺side
交番の近くにあった監視カメラは爆発で吹き飛んでおり、俺の異能力はバレずに済んだ。
死の運命を歪めた5人には、軽い火傷や擦り傷、打撲などを残しておいたため、幻覚を見せる異能力者に騙されて、爆発に少し巻き込まれたのだろうと俺が言えば、誰も疑う事は無い。
何故こんな事をするのか?
それは、この件が、“上”の奴等に知られれば、一巻の終わりだからだ。
あくまで幻覚の異能力者のせいにする為に、交番の建物の「死」を無かった事にし、元の状態に戻した。
物に異能力を使った場合は、俺にはなんの反動も来ない。
これで、犠牲もなく、俺にも飛び火は来ないはずだ。
…俺が異能力を使う一部始終を、
誰かに見られていなければ、の話だが。
『ッ油断したな。』
「避けるな!僕と戦え!」
黒い外套が揺らめく。こちらに向かってくる黒獣を、なんとか勘で避ける。
黒獣に気を取られ、俺は、入り組んだ路地裏の奥の方に入ってしまっていた。それに気づき、焦りが募る。
(まずい…!)
ここ、ヨコハマが魔都と呼ばれる理由は、
裏社会の闇が渦巻いているから。
たった一歩、路地裏や小道に踏み込めば、
そこは黒の世界。普通の世界の常識は通じない。
銃声は鳴り響き、死体が転がっているなんて事は、
“あっち”では常識なのだ。
俺はそれを知っている。
『久しぶりに踏んだな、他人の血溜まりは…』
「ゲホッゴホッ、随分と…余裕があるようだな!」
苛立った様子で吠えた男の声と連動するように、
牙を剥いた黒獣がこちらに向かってくる。
この数は、さすがに避け切れない。
右肩が食いちぎられ、鮮血が飛び散った。
それをどこか他人事のように眺めながら、俺は言った。
『お前…指名手配犯のポートマフィンか?』
「(マフィン…?)ゴホン…ポートマフィアだ。」
『あ、間違えた。』
「ゲホッ…貴様、己の状況を理解しているのか?お前を捕まえろという首領の命だ。僕はそれに従うのみ。
貴様は闇で生きるに相応しいのだ。
…何故、それが分からぬ?」
『…分かってる。それでも俺は、闇の中で生きたくない。
俺は死ぬまで人を守り続ける…!』
「そうか。ならば…」
背後に気配を感じ、振り向いた瞬間、鈍い音がして、体が傾いた。
『しまっ…』
「悪りぃな。首領の命令だ。」
視界が狭まる。
やがて、何も見えなくなった。
ラッキーカラー
あずきいろ
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ミカン酢 - コメントお待ちしてます!出来れば評価もよろしくお願いします^ ^ (2022年1月11日 23時) (レス) id: 2555c2f634 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:ミカン酢 | 作成日時:2022年1月7日 6時