もしもし、もしも (ページ26)

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しばらくして、Aのスマホから着信を教える音が鳴り響いた。

画面に表示されたのは【西畑大吾】の文字で。

律儀に応答ボタンを押そうとしてる指は、隠しようがないくらいに震えてて、胸が痛くなる。

「無理に出んでええよ」

震える指とスマホを手に取って、スマホはバッグの中に入れた。

多分我に帰った大吾が謝りの電話を入れてきたんやろうけど、Aの様子からは、謝罪を受け入れられる状況ではないことがよく分かる。

電話に出るのすら怖いんやったら、顔を合わせるのは多分もっと難しい。

学部は違うから大学で顔を合わせることはほとんどないやろうけど、バイトのシフトが被ってたら？

顔を合わせへんわけにはいかへんし、それを回避できる手は一つしかなかった。

「…とりあえず、大吾と被ってる分のAのシフトは俺が代わりに入るわ」

『でも、それやったら正門が忙しくなる』

「じゃあAとも大吾とも被ってない俺のシフトと交換やったらいい？」

なかなか無理やりな手段やと自分でも思うけど、今の俺に出来ることはこれくらいしか思い浮かばへんくて。

人手さえ足りてたら社員にも何も言われへんやろうし、何とかなるやろう。

「何かあったら電話してくるんやで」

『ん、ありがとう正門』

「どういたしまして。じゃあ、おやすみ」

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