もしもし、もしも (ページ20)

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両腕は押さえられたまま、再び重ねられる唇。

角度が変わって何度も重なる度に、どんどんぼやけていく視界。

いつの間にか目に張っていた水の膜は、当てられていた唇が首筋に移動したときに、決壊した。

『……っ、』

一度決壊してしまったら止まることなく流れ出す涙。

自由が効かない両腕では流れ続けるそれを拭うことも出来なくて。

涙が頬を伝っていく感覚に耐え続けてると、拭おうとしてくれたのか、頬の辺りに伸びてくる大吾の両手。

手が伸びてきたことで自由になった両腕で、私は大吾を突き放して、自分のバッグだけを手に取って部屋を出た。

カラオケ店から飛び出して、早歩きで必死に家までの道のりを進むけど、私の核心を突いた一言を発したときの大吾の目が、鮮明にフラッシュバックしてきて苦しくなる。

…苦しいのは、私だけじゃないはずやのに。

バッグの中から手探りでスマホを取り出して、勢いに任せて押した発信ボタン。

「もしもし？」

3コール目で電話に出てくれた、その声はいつも通り、大きい優しさを含んでて。

引きかけてた涙の波が、また押し寄せてきた。

『まっ、さかど……』

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作者のピッコです。お話も佳境に入ってきましたね…
更新頻度落ちていて申し訳ないです。
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