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食事も済み、いよいよ発つ時を迎えた。
ふかふかした衣服を手に部屋中を点検して回るA。何をしているのか尋ねたら、
「戸締まり用心、火の用心！」
訳の分からないことを言われて困惑した。
「さて。そろそろ行くかな……」
「あ、待って。一つだけお願いしてもいい？」
「お願い？何かの契約？」
「そ、そんな大げさなものじゃなくて！そ、その……」
チラチラと俺を見るA。何が言いたいのか分からないから少し苛ついて、
「早く言え。これ以上日が高くなるとまた動けなくなる」
そう急かしたらAは頬を赤く染めて恥じらいながら呟いた。
「その羽に……、触っても、いい？」
「羽？」
天使ならば触れることも触れさせることも許されない翼。
穢れた人間に触れられたらたちまち自身も穢れ、力を失う。
でも俺は違う。人に触れることも自らを触れさせることもできる。
「……いいよ。そのくらいなら」
それは堕ちたればこそ。
ベッドに腰掛け、Aを包み込むように翼を広げる。
彼女は羽根の一枚一枚をじっくり観察し、恐る恐る手を伸ばし黒い一片に触れた。
ほわっと溜息を吐き、竪琴の弦を弾くように右へ左へ、上から撫で下ろして触り心地を楽しんでいるらしいA。
「凄い……。本当にどれも真っ黒。流石にこの大きさの翼だと羽根の一枚もやっぱり大きいなぁ」
「……もういいだろ？こんな羽を見たって――」
「艶があって綺麗ね。素敵……プラネタリウムみたいに輝いてる」
「き、れい？」
「うん……すごく、綺麗……」
胸の中心で何かが音を鳴らす。
心臓なんて無いと思っていた。
「俺、褒められてるの？」
「私の精一杯の賛辞だけど？」
だから心なんてものも無いと思っていた。
でも確かに胸の真ん中に熱を感じた。
そろりと指を伸ばす。
耳朶のすぐ下、首筋にこっそり付けた痕に触れる。
「ど、どうした、の？」
Aが見つめる瞳の中にいる俺は
何故こんなに苦しそうなんだろう。
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あがしおん(プロフ) - 花帆さん» コメントありがとうございます！面白いと言っていただけてよかったです♪吸血鬼番外編の続き、鋭意制作中です。ボチボチゆるっとのんびりお待ち下さいね☆ (2021年7月6日 7時) (
レス) id: 858700461f (このIDを非表示/違反報告)
花帆 - 吸血鬼ジミンの番外編を拝読できて、すごくうれしい&面白いです！！ぜひこの続きも拝読できるとうれしいですヽ(*≧ω≦)ﾉ これからも応援しております♪ (2021年7月6日 6時) (レス) id: aa0adc990d (このIDを非表示/違反報告)
あがしおん(プロフ) - みほんぬさん» みほんぬさんありがとうございまーーーす！1年ぶりののユンギ主任でしたっ！どうぞ引き続き他の作品もお楽しみくださいっ (2020年3月12日 13時) (レス) id: e1b87f381c (このIDを非表示/違反報告)
みほんぬ(プロフ) - ユンギさーん！あがしおんさん！星！星ー！押しまくりたいのに…既に…といわれてできないー！また楽しみに待ちます！いつもありがとうございます！他も見てます！また他の作品も繰り返し読んできます！ (2020年3月12日 12時) (レス) id: 9284a0a7c9 (このIDを非表示/違反報告)
あがしおん(プロフ) - 未緒さん» んぉぉ……！そう言っていただけてありがたいです〜！ (2020年3月9日 22時) (レス) id: e1b87f381c (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：あがしおん
| 作成日時：2020年2月18日 1時
