9 ページ2
.
暫く寝顔を眺めていたが。
「そろそろつまらん」
いつまで眠っているつもりなんだ？もうとっくに日は昇ったと言うのに。
「……おい、A、起きろ」
「ん〜〜〜〜」
「客人をもてなさずにまだ寝てるつもりか？」
「うー……夢だ……。カラスが……人になるなん…………っ！！」
カッと見開いたAと目が合う。
「やっと起きた」
「………………」
輝く黒目に光のない目をした真顔の俺が写っている。
まるで温かみのない死人のような顔。感情を消し去ってしまった仮面のような顔。
今、俺ってこんな顔をしているのか。
そんな冷めた感想を抱いた所で、真っ赤な顔のAが絶叫を上げた。
「なあ、そんなに怒る事か？」
「動物ならともかく！おとっ……男の人に押し倒されたらそりゃあ叫ぶに決まってるでしょ！」
漸く起床したAはキッチンに立ち、朝の食事の準備中。
俺の分まで作るらしく、食べられるもの、食べられないものや好き嫌いの有無なんかをしつこく聞かれた。
「天使も御飯食べるんだね」
「彼奴等は食べなくても平気だけど、堕天使の俺は日中は外からエネルギーを得ないと普通に飢え死にする」
背中の羽をふわりと開くと、忘れてましたと言わんばかりの表情を俺に背を向ける事で隠した。
「堕天使……」
「あ、生肉は止めてくれよな？流石に完全な異形には堕ちたくはないから」
「は、はい」
俺は久しぶりの休息のおかげでこの姿を維持できるだけの魔力が戻った。
Aのおかげでもある、か。
感謝はしている。でも恩返しをするつもりはない。そんな事して情を持たれても、どうせ発つんだから後腐れなくさっさと別れたほうがいい。
食事を分けてもらったらここを出て次の土地へ向かうか。
そう考えながらカーテンの隙間から外を伺った。
「っ！」
瞬間、太陽の日差しが無数の針となって掌に突き刺さる。急いでカーテンを閉ざし、鋭い痛みに顔をしかめながら窓辺から離れカーテンの陰になっているベッドに寝転んだ。
チリチリと消えない痛みを見る。
光を浴びた掌に刻みつけられた真っ赤な火傷の痕。
「チッ……。やっぱりこの姿で日の下には出られないか……」
俺の魔力では治せない太陽の焼印を握りしめた。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 203人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「オリジナル」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
あがしおん(プロフ) - 花帆さん» コメントありがとうございます！面白いと言っていただけてよかったです♪吸血鬼番外編の続き、鋭意制作中です。ボチボチゆるっとのんびりお待ち下さいね☆ (2021年7月6日 7時) (
レス) id: 858700461f (このIDを非表示/違反報告)
花帆 - 吸血鬼ジミンの番外編を拝読できて、すごくうれしい&面白いです！！ぜひこの続きも拝読できるとうれしいですヽ(*≧ω≦)ﾉ これからも応援しております♪ (2021年7月6日 6時) (レス) id: aa0adc990d (このIDを非表示/違反報告)
あがしおん(プロフ) - みほんぬさん» みほんぬさんありがとうございまーーーす！1年ぶりののユンギ主任でしたっ！どうぞ引き続き他の作品もお楽しみくださいっ (2020年3月12日 13時) (レス) id: e1b87f381c (このIDを非表示/違反報告)
みほんぬ(プロフ) - ユンギさーん！あがしおんさん！星！星ー！押しまくりたいのに…既に…といわれてできないー！また楽しみに待ちます！いつもありがとうございます！他も見てます！また他の作品も繰り返し読んできます！ (2020年3月12日 12時) (レス) id: 9284a0a7c9 (このIDを非表示/違反報告)
あがしおん(プロフ) - 未緒さん» んぉぉ……！そう言っていただけてありがたいです〜！ (2020年3月9日 22時) (レス) id: e1b87f381c (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：あがしおん
| 作成日時：2020年2月18日 1時
