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――ある日の午後、会議の準備の為の資料が詰まった箱を抱え、会議室へ向かっているときだった。
「あの、」
不意に背後から声をかけられた。
振り返るが誰もいない。
気のせいだったのかなと、キョロキョロしたら今度は正面から、あの。と先程の控えめな声。
「……え、あ、」
体を斜めに向けると女性の姿が見えた。
手に持った箱が、俺より小さな彼女の姿を見事に隠していたから気が付かなかった。
「俺？ですか？」
「……はい、あの……ペン……」
おずおずと差し出されたのは俺のお気に入りのペン。
「落としたところ見たので……」
胸ポケットに差していたそれが、資料の箱に押し出されて落ちたらしく、彼女がそれを拾ってくれたのだ。
「ありがとうございます。……あ、」
ところが、俺の両手は塞がっていてペンを受け取れない。
どうしようかと思ったところで彼女が失礼しますと小さく頭を下げ、俺のスーツの外ポケットにペンを差し、ペコリと頭を下げ俺がお礼を言う間もなく踵を返し立ち去った。
些細と言えば、些細なこと。
ただそれ以来、何となく彼女の事が何故だか気になって、たまにその姿を目で追ったりするようになった。
彼女のデスクは俺のデスクからそこそこ遠いし、あんまりジロジロ見たら怪しまれるから、仕事に支障をきたさない程度にチラッとだけ。
視線を落としたり上げたり、右を見たり左に傾いたり。忙しないな、なんて観察している俺もなかなかの暇人だと可笑しくなったりもした。
ペンを拾ってくれたあの日から、特に距離が近くなるでも親しくなるでもない俺と彼女。
同じ課の同僚といえ、接点がなかった俺達の関係性が、ペンの一本ごときで劇的に変わるわけがない。これから先もきっとこんな距離感で過ぎて行くんだろう、なんて思っていた。
だから、こんなところで会うなんて思ってもみなくて、ちょっと驚いている。
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あがしおん(プロフ) - miyaさん» いつもコメントありがとうございます！ジンくんはほんわかあったかい感じがよく似合いますよね！気に入っていただけてよかったです！ (2019年12月7日 14時) (
レス) id: 97c4c54377 (このIDを非表示/違反報告)
miya(プロフ) - 大好きなジンくんのお話ありがとうございます(≧▽≦)そうこのゆったりとした空気感が大好きなんです！寒くても、ジンくんの周りは温かいですね( 〃▽〃) (2019年12月7日 13時) (レス) id: 6284949262 (このIDを非表示/違反報告)
あがしおん(プロフ) - miyaさん» 私も国語の授業は漫画本隠し読みしてた類の人間ですよ！でも、お気に召していただけて何よりです〜♪ (2019年10月14日 1時) (レス) id: d4473d8198 (このIDを非表示/違反報告)
miya(プロフ) - あがしおんさんの愛情いっぱいの言葉、大好きです(T△T)あぁ、本当に国語の授業寝ていた自分が恨めしい。。。。 (2019年10月14日 0時) (レス) id: 6284949262 (このIDを非表示/違反報告)
あがしおん(プロフ) - miyaさん» miyaさん、コメントありがとうございます。作者も泣いております。近頃は涙腺がユルユルで……。 (2019年10月14日 0時) (レス) id: d4473d8198 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：あがしおん
| 作成日時：2019年8月22日 8時
