マスカレード【F/B/7/7/7】

▼15 オタクのサガ？ ページ15

電車が来て乗り込んでも依然として腕は掴まれたままだ。


でもその掴み方には遠慮があるのか力は込められていなくて、多分振り払えばすぐに解けてしまうと思う。


それを何故払わないのかは自分でもわからない。


「…Aさん、なんか元気ない？何か悩んでる？」


恐る恐ると言うように私の顔を覗き込んでくるFBさんと目を合わせるとふいっと逸らされてしまう。


横を向くから私から見えるのはぽっかり浮かぶ喉仏と髪のかけられた耳だけ。


その耳が少し赤みを帯びている。


照れてるの？ずっと手を掴んでることより目があった事に？ん？可愛いか？？？


「いえ…なにも」
「本当に？」


また覗き込んできて今度は逸らさずに本当に心配そうに目を見てくるからこっちが恥ずかしくなり俯くと掴まれてる腕が目に入った。


「あっ！…ごめん！」


私の視線を追ってFBさんも気づいたのかそう言ってパッと腕はあっけなく離され、電車内なのに冷んやり冷たい風が腕をかすめた気がした。


「いつまで繋いでるんだって話だよね」


いつもの盛大な笑いではなくちょっと控えめな笑い。
…こう言う顔もするんだ。


不覚にも新しい一面にキュンとしてしまうのはオタクのサガだろうか。

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