無色の枷 (ページ9)

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ⅸ ページ9

──────……

「ねェ、抱きしめてもいい？」

「ダメです」

ソファに座ったAを暫く見つめていた影汰は、突然そう言い出した。
先程だけでは物足りなかったようだ。
Aの返答など聞き入れもせず、影汰は彼女を抱きしめる。

「ちょっと…！ダメって言ってるんだけど」

「あァ〜……やっぱりこの華奢だけど柔らかくていい匂いのするこの感じ…………可愛い……堪んない」

「キモいって！離してよ！」

「あったかい…………幸せ……」

「聞けよ！！」

「…ん？」

突然、影汰はAの背中にある異物に気が付いた。

「……これ、ブラのホック？」

「なっ…！触んないで！！」

「……フフ…フヒヒヒ…………ねェ、これ外していい？」

「マジでやめて！！」

Aは突き放すようにして必死に抵抗する。
しかし抵抗も虚しく、彼に両手首を掴まれてしまった。

「暴れるなら手錠付けるって……言ったよね？」

「！！」

言いながら影汰は、ガチャリと彼女の手首に手錠を付ける。
反論する隙もない間に付けられた手錠を見て、Aは絶望した。
少しは話の通じる相手だと思っていたが、やはり彼は犯罪者で自分の脅威なのだと…改めて実感した。

「さ、これで少しは抵抗できなくなったかな」

「ほ、本当にやめてよ…！あと……手錠…外して」

「ダメだよ。君、暴れるでしょ」

「暴れない。もう暴れないから…」

「うーん…信用できないなァ。……じゃあホック外すまでの間は付けてて」

「い…イヤだよ！！」

「じゃあ一生付けてる？」

「…！！」

「フフ…ホック外すまでじっとしてたら、ちゃんと手錠も外してあげるから」

「……」

するとAは突然、諦めモードに入り無抵抗になった。
たかがホック外すだけ。少し我慢してれば済む話だ。
どうでもいい……好きにすればいい。

「ヘヘ……ホックの片手外しとか…やってみたかったんだ」

「そう。早くして」

「…あ、あれ？……結構…難しいな」

「もう両手にしたら」

「…君ねェ……もう少しドキドキとかしないの？」

「ドキドキ？私が、お兄さんに？」

するとAは吐き捨てるように笑って言う。

「ハッ…冗談じゃない」

その瞬間、プチッという小さな音と共にホックが外れた。