無色の枷 (ページ8)

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──────……

「…………」

トイレの中、Aは一人考えていた。
手も足も完全自由。見張りもなし。
何かするなら絶対に今……

「…………」

しかし大してトイレには使える道具もないし、唯一外に繋がる窓も小さすぎて通れない。
だがそこで一つ閃いた。
この小窓、身体は通らずとも声は通るのでは…と。

Aは便器の蓋を閉めると、出来るだけそっとよじ登った。
窓の外を見て誰か人がいれば、助けを呼べるかもしれない。

だがもちろんリスクもある。
失敗すれば、声を出したことによりさらに自由を奪われ拘束されることになるだろう。
だからまずは外の様子を見るところからだ。
これで誰か外にいれば……

「え……」

外の景色を見た時、Aは絶望した。
人どころか住宅すらない。
周りに広がるのは荒れ果てた田んぼばかり。
街灯を見つけるのすら難しい暗闇を見つめていた時、背後でノック音が聞こえた。

「…A？長くない？逃げ出してないよね。ドア開けるよ」

「ちょ、ちょっと待って！やめて！その…お、お腹痛くて……！あ、でももう外出るから待ってて！！」

今の状況を見られたらまずいと思い、Aは急いでそっと便器から降りる。
悔しいが今ここで出来ることは何もないのかもしれない。
諦めると、彼女はトイレを流しドアを開けた。
その瞬間……

「捕まえた」

「わぶ…ｯ！！」

突然影汰に抱きつかれ、Aは抵抗する間もなく拘束される。

「な…っ、やめ……ｯ！！」

「フフ……スー…ハー…………連れてきた時も思ったけど、Aっていい匂いするよね」

「トイレから出てきたばかりの匂い嗅ぐのやめて！！」

「トイレから出た後じゃなきゃいいの？」

「ダメだけど！でもこれは普通に私のプライドがイヤ！！」

「何で？別にいい匂いするよ？」

構わず嗅ぎ続ける影汰に対し、Aは馬鹿らしくなり抵抗をやめる。
そもそも誘拐犯に対して匂いなんて気にする必要ないし、力で勝てない相手から抜け出すなんて無理なんだから疲れるだけだ。

影汰はAを抱き抱えると、そのまま足に枷を付けた。

「…フフ、君は本当に突然諦めるよね」

「抵抗するだけ無駄だし」

「これも適応力ってやつ？」

「じゃない？」

冷めた表情でそう答えるAをソファに降ろすと、影汰は幸せそうに彼女を見つめた。