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シャワーを終え、髪も乾かし終えたAが洗面所を出ようとすると、入口で待機していたらしい影汰に突如抱きつかれた。
「うわっ!?なになに!?もう足枷は付いてるから逃げないんですけど!」
「……スー…ハー…」
「ちょっ……ねぇ、それ本当やめて」
「…いい匂い。Aの匂い……」
「キモい」
堪能するように髪の匂いを嗅ぐ影汰に嫌気がさしつつAがもがいていると、彼は今度は少し残念そうに呟きだす。
「……でも服の匂いが違う」
「そりゃ新品だからね。新しい洗剤で洗えば匂いは変わると思うけど」
「そっか…なら早く洗おうよ」
「無茶言うな。私の着る物がなくなる」
影汰は残念…と言いながらAから離れると、彼女の着ている服を見つめた。
「…それにしても、似合ってるね。そういう服も着るんだ」
「うん。普段はむしろこういうラフな感じのが多いかな。この前は仕事帰りだったから、フォーマルめの服着てたんだけど」
「そうなんだ。どっちも凄く可愛い…」
「どーも。……あ、ちなみに、ちゃんとしたお出かけの日とかは、もっと気合い入れた服着たりするんだよね」
「そうなの?へぇ、見てみたいな…Aの本気の服装。きっともの凄く可愛いんだろうなァ……」
するとAは、試すような目でニヤリと笑って彼に言う。
「…なら、私とデートでもしてみる?」
「!!」
影汰は目を丸くして固まりだす。
しかし数秒の沈黙の後、彼は弱々しく座り込んだ。
「…っハァ〜……ずるいなァ、君は……」
「なにが?」
「君とのデートを断れるわけないでしょ。それに可愛いカッコだって見たい。……でも、外に出すわけにはいかないんだよ」
「あっそう。じゃあ外出コーデは段ボールに封印かな」
「え…!?」
「当然でしょ?外に出ないんだもん。…それとも、やっぱり出してくれるって言うの?」
「いや…それは、無理だけど」
「はい、じゃあ封印。デートも無し」
「そんなァ…!……本当に君ってずるい」
「どっちが」
Aはベッと舌を出すと、そのままソファに向かっていった。
しかしそれすら可愛いと思った影汰は、彼女の後を追いかけ隣に腰掛けだす。
「……ねぇ、せめてもう一度抱きしめても…」
「無理。てか今からメイクするから邪魔しないで」
「わかった…」
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さく - すごい面白いです!!!! 更新頑張ってくださいね、ずっと待っていますから (2022年1月19日 18時) (レス) @page23 id: dc6ef9e765 (このIDを非表示/違反報告)
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作成日時:2021年11月24日 17時