xviii ページ18
──────……
「…それより、今日からこれを付けてほしいんだけど」
「これ…?」
そう言って影汰が取り出したのは、長い鎖の付いた足枷だった。
彼はAの足から元の足枷を外すと、新しい物に付け替えた。
「…ほら。枷が片足だけになったから、歩けるようになったでしょ?」
「!ほ、ほんとだ…!!足が自由に動かせる!!」
Aはピョンとソファから飛び降りると、嬉しそうにリビングを歩き回った。
その様子を見て、影汰も思わず微笑む。
「いやぁ、やっぱり自立歩行が出来るって素晴らしいね!!」
「フフ…喜んでもらえてよかった。これでトイレもお風呂も好きなタイミングで行けるよ」
「本当!?…てか、そんなに自由ならもういっそ枷外してもいいんじゃない?」
「それはダメだよ。この鎖は家の中心付近に繋いである。…君が家から出られないようにね」
「なるほど。家の中限定で自由…か」
Aは、まあそんなことだろう…とすぐに納得した。
しかし、これは彼女にとっては大きなことだ。
誘拐されているとはいえ、過ごす以上は出来るだけ快適に過ごしたい。
今の状況は、その環境下で最高と言ってもいいぐらいだ。
Aは、ひとまずはこの自由を謳歌させてもらおうと、影汰を見つめた。
「…ま、とりあえずじゃあ、早速シャワー浴びてきていい?」
「うん、いいよォ。……あ、待って」
「なに?」
影汰はそう言うと、一度自室に戻って行った。
そしてリビングに戻ってきた彼の手に握られていたのは……カッターナイフだった。
「なっ…!カッター…ナイフ!?…何、する気?」
「二本ある」
「二刀流!?」
「いや、一本は君の」
「…………戦えと?」
「フッ…違うよ」
影汰は下に置いてある段ボール箱を指差す。
「…これら、開けなきゃ着替えもシャンプーも新しいの無いままでしょ」
「あ、そうだった」
ゲームのやり過ぎと誘拐犯との対峙も相まって戦闘脳になっていたAは、一度落ち着きを取り戻す。
誘拐犯である以上油断は出来ないが、よくよく考えれば彼は自分を好きである以上傷付ける行為はしないはずだ。
根拠はなくとも、何故かそこだけは信用出来る気もした。
…誘拐犯に優しさと信頼を感じるなんて、変な話だけど。
Aは心の中でそう呟くと、大人しく段ボールを開封しだした。
29人がお気に入り
この作品を見ている人にオススメ
「オリジナル」関連の作品
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
さく - すごい面白いです!!!! 更新頑張ってくださいね、ずっと待っていますから (2022年1月19日 18時) (レス) @page23 id: dc6ef9e765 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作成日時:2021年11月24日 17時