【ツイステ】破天荒な人魚は自寮がお嫌い (ページ30)

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29話ページ30

「明太イカスミパスタ」

「………………好みが別れそ」

「な、なんか、黒いんだゾ……」

ことん、と席に盆を置いた私に、
4人は揃って胡乱な目を向けてきた。

……イカ好きなんだもん。

「そ、そうやって否定するのは良くない！」

「ありがとデュースくん、
顔ひきつってるから無理しないで」

好みだからまぁ文句は言えない。
皆が食欲を無くさないように早く食べとこう。

「ご馳走様でした」

「はっや！」

「やぁだって嫌いな人は見たくないでしょ～」

「そこまで気を使わなくてもいいのに……」

呆れ顔でユウくんに言われた。

「それにしても、
初めてAを見た時は髪は長いし細いし
ずっと寝てるし
どんなやつなんだと思ってたが……」

「案外普通のやつなんだゾ」

「どんなやつだと思われてたんだろう……」

「なんかぁ、
3年に2年留年した人がいるらしいんだよな」

そんな感じ？

なんて言われて私は愕然とした。

さすがにそんな不良じゃない。

「私ってそんなに不良なの……」

「私？
そういえば
Aは一人称も話し方も定まらないな」

「えっ？！えっ、えっとぉ！
そんなこと」

ないよ！
と言おうとした瞬間だった。

「おや、Aさん……
安定のイカですか」

「ジェイドパイセン」

トン、と肩に手がおかれ
柔らかな語調でそう言われる。

「「「だ、だれ？！」」」

と声を揃える4人に、
私がジェイドを紹介するか
と口を開きかけた時だった。

「カジキちゃんはぁオレらのだから～」

「まためんどくさいのが来た」

高身長なふたりの顔を見ようと
思い切り顔を上げる。

ジェイドは安定に柔らかな笑顔だった。
指は肩にくい込んでいるが。

ごめんってそんなに怒らないでよ！
私もやべって思ったって！ね！ね！

そしてフロイドは
今日は大層期限が悪そうである。
否、今日は、ではない。
こいつの場合
一分一秒1コンマ単位で機嫌が変わるので、
そのまま感情の機微には注意が必要だ。

「ごめんみんな……
この2人は私の寮の先輩。
双子の兄弟なんだ。
ジェイド･リーチにフロイド･リーチ。」

「は？何紹介なんかしてんの？」

「同郷のあんたらを
突拍子もなく絡んできた変人
にしとく訳に行かないでしょう」

ぴく、とどうやらカンに触ったらしく
首に手をかけてフロイドは笑う。
相変わらずの剣呑な笑顔である。
初対面にはみなこれだから参ってしまうが。