15話 ページ16
「「カジキの人魚〜？！？！」」
「そうですよ」
あのフロイドくんたちと同じってことっスか？！
とラギー先輩は叫んだ。
「フロイドの知り合いなんですか……」
「はぁまぁ……
たまにモストロ･ラウンジで働いてるっすけど……」
「道理で歩くのすらままならねぇわけだ」
「……お見苦しい限りで……」
ついこの前足を手に入れたといえば、
2人は揃って目を丸くした。
「確かにフロイドくんは
水泳の時長くなってるっスね……」
Aも……？？？
と困惑顔を向けられて、
あんなに長いのはウツボのあいつらだけですよ
と否定しておいた。
まぁ陸の、
それも砂漠に住んでいるというお2人からしたら、
魚の違いなんて分からないのだろうけれど。
「こんなのですよ」
土のある場所に移動して木の棒でウツボを描く。
「あー！なるほど、フロイドくんっすね」
「ヘビみたいだな」
「んでーカジキってのはこんなんです」
ガリガリ。
落書きは得意だった。
海底の砂に落書き。
秒で消えるけれども。
「つ、の？」
「あーこれは口ですね」
「お前すげぇ尖ってんぞ」
「ほらこれ」
ぴょこぴょこ、と前髪の頑固な部分を引っ張ると
2人は揃って頷いた。
「俺はその中でもバショウカジキって言って、
海の中で1番泳ぐのが速いんですよ！」
すごいでしょう！
そういえば、ジト目で見つめてくるラギー先輩。
「それでこの体たらくっすか」
「うう」
「とりあえず
この学園で1番足が遅ぇんじゃねぇか？」
「ううぅっ！」
いちばんはやい……？？？
と疑心暗鬼の顔。
いやそうなんだもん！
ほんとに速かったんだもん！！！
海の中に来てくださいよじゃあ！！
その耳付けた存在が
海にいるとかありえないですけど！！
地上も足も私には新鮮すぎて新鮮すぎて……！！
「箱入りの中の箱入りかと思ったっすけど
そういう理由ならまぁ。……まぁ……」
「なんですかその、
それでももう少し……って顔は！！」
「となればお前は産まれたての赤ん坊ってことだな
ならまぁ、まだ未来が想像できるぜ」
「赤ん坊！！！」
稚魚ってことですよね？！
15にもなって！！！
「ま、まぁ、そうっすね。
ハイハイしてないっすから、
むしろ期待値あるっすよ！！！」
……その取ってつけたような励ましが、
今の私には1番刺さります……
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作者名：よく骨を折る田中 | 作成日時：2020年6月30日 22時
