31話 ページ33
仮面の男が去ってすぐ、少女はランスに声をかけた。
『ねぇ。』
ラ｢なんだ。｣
『結構怪我してるでしょ？
早く手当しないと…。』
ラ｢問題ない。｣
『そんなに血が出てるのに問題ないわけないでしょ…！
早く手当を…！』
ラ｢問題ないと言っているだろう。｣
『そんなわけない！』
マ｢してもらいなよ、ランスくん。｣
『マッシュは怪我してないの？』
マ｢全く。｣
『(…何故。)
けどちょっと濡れてるじゃん。これ使って。』
『…メモリート』
少女はタオルをつくり、マッシュに手渡した。
マ｢おぉ…。すごいねAちゃん。｣
『タオルくらいなら簡単につくれるからね。』
マ｢…シュークリームは？｣
『え？』
マ｢シュークリームはつくれる？｣
『ちゃんと記憶できてれば、多分…』
マ｢今度つくってください。｣
そう言い、マッシュは少女にお辞儀した。
『え、あ、うん…。』
マ｢やった。ありがとう。｣
『うん…。て、あれ？あいつは？』
マ｢……もう出てっちゃった。｣
『え！？』
少女がマッシュの指さす方向を見ると、
既に少し離れたところを歩くランスがいた。
『じゃ、じゃあまたね、マッシュ！』
マ｢うん。｣
マッシュにそう声をかけ、少女はランスを追いかけたのだった。
『待って！』
ラ｢……問題ないと言っているだろう。｣
『問題ないわけないって言ってるでしょ。
……手当だけでもさせてよ。』
ラ｢貸しでもつくるつもりか？｣
『そういうわけじゃない。ただ見過ごせないの。
私に手当されるのが嫌なんだったら、せめて保健室には行って。』
ラ｢………。｣
少女は自分の話なんて聞くわけがないと思っていたが、
意外にもランスはその場から動くことはなく、立っていた。
『…ここで手当するのもあれだし、私の部屋でいい…？』
ラ｢……あぁ。｣
『じゃあ行こっか。
(…私が手当するの嫌なのかと思ったけど、そうでも無いのかな。)』
そうして、2人は502号室へと向かった。
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作者名：あかり | 作成日時：2024年2月6日 7時
