嘘吐きって言って 1 × ページ22
⚠︎︎彼の日の号 と同じ世界線です
ab side
｢ごめんね…｣
すやすやと寝息を立てるあなたの頬に、
一つキスを落とす。
そうして、あなたを起こさないように、
そっとその腕の中から抜け出して。
ベランダへと足を伸ばすと、朝霧に溺れる街を眺める
｢このままでいたい｣
そうして、誰にも届くことのない想いを、 口ずさむ。
それが、いつの間にか習慣になっていた。
あなたよりも先に起きて、あなたの温もりを確認する。
なくならないように、なくさないようにと、
そっとその腕を引き寄せて。
名前のないこの脆い関係が終わらないようにと願う。
そんなの馬鹿みたいだ。
本当は終わらせなくてはならない。
そのぐらいわかっていて。
それでも、一度温もりに触れてしまえば、
離すことなど出来なかった。
かと言って、名前を付けることも出来なくて。
ただ、宙ぶらりんなまま。
終わらせることも始まらせることも出来ないまま。
この気持ちを表す言葉を持てずに虚しさに涙を流すだけ
一つため息を零すと、瞳に溜まった涙を拭った。
こんな悲しい習慣はやめなくては、と思うのに、
やめられないのは、この時間さえも愛おしいからか…
なんて馬鹿みたいだ。
時計を見れば、もうすぐ7時を回る頃で、
少し駆け足で、ベッドへと戻る。
そうして、未だに穏やかな寝息を立てているあなたの横に
そっと寝転んで、その大きな胸に顔を寄せて。
｢おはよう｣
｢おはよう｣
こんな馬鹿みたいに寂しい習慣をあなたにだけは、
知られぬようにと、さも今起きたように挨拶を交わす
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作者名：羽瑠 | 作成日時：2023年2月17日 23時
