あなたの香り 1 ×△ ページ3
⚠︎︎ 事故表現あり。
⚠︎︎消えるまではと同じ世界線
fk side
あの日から煙草が手放せなくなった。
少し前までは禁煙なんて言って、
買わないようにしていたというのに
今では、煙草だけが生きていく頼りになった。
煙草を吸えば、あなたに会えるような気がする。
『そんなに吸ったら体壊すぞ笑』
そうやってまた笑ってくれるような気がする。
『吸いたい気分なんだよ笑』
喫煙所に行けば、またあなたがいるような気がする。
いつもと変わらぬ香りを纏ったあなたが
待っているような気がする。
｢ねぇ、そんなに吸ったら体壊すよ｣
｢んー、わかってるよ…｣
｢なら吸うのやめてよ｣
｢……それがやめられないんだよね…笑｣
｢なんで…｣
｢……吸わないと忘れてしまいそうだから…｣
ごめんね。
可愛い最年少にそんな顔させちゃうなんて、
お兄ちゃんとして、最年長として、最低だよね。
でもね、まだ手放せないんだよ。
この煙草さえあれば、吸い続けさえすれば、
あなたの香りを忘れずにいられる気がするから。
｢……本当にずるいよね…｣
｢ははっ笑 そうだねぇ笑｣
｢……こんなに縛り付けておくなら、
置いていかないでくれれば良かったのに｣
｢……本当にね。ずるい……｣
照をはねたのは、信号無視の自動車だった。
横断歩道を渡ろうとしていた親子に向かって
突っ込んでいった車はその親子を庇った照にぶつかった
肺はつぶれ、手はおかしいな方向に曲がって、
肋骨は砕けた。
正直即死じゃなかったことさえ、奇跡だったらしい。
体は傷だらけで、至る所に包帯が巻かれて。
たくさんの管が伸びて。
それなのに、その大きくて優しい手のひらだけは、
いつもと変わらずにそこにあった。
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作者名：羽瑠 | 作成日時：2023年2月17日 23時
