特等席の君へ 1 # ページ18
⚠︎︎特等席で笑わせて と同じ世界線です
fk side
｢俺、彼女できた｣
そう言えば、明らかに動揺の色を映して、
苦しそうに笑うから、
｢あれ？おめでとうって言ってくれねぇの？笑｣
そうやって笑って誤魔化すしかなかった。
｢いや、おめでとうなんだけど、急すぎて。
だってそんな素振り少しもなかったじゃん｣
｢俺がめっちゃアタックしてたんだけど笑｣
嘘。
アタックなんてしていない。
向こうから告白してきた。
俺はただそれに''はい''と答えただけだ。
本当はさ、Aのことが好きだよ。
Aが俺の事を想ってくれているのも気付いている。
でもさ、俺たちはダメなんだよ。
幼なじみの俺たちじゃダメなんだよ。
気付かぬうちに俺たちはお互いに依存していて。
お互いがいないとダメになっていて。
それはAも気付いていただろ？
俺たちは俺たちだけのちっぽけな世界で生きていた。
それなのに、それが全てだって、そう思い込んで。
幸せだって笑うんだ。
でもさ、それじゃダメなんだ。
今のままじゃダメなんだよ。
''幼なじみ''
その言葉は俺たちを縛り付ける鎖なんだよ。
俺たちは、この鳥籠に捉えられて
自由に飛び回ることも
空の青さも知らないままで過ごす。
それじゃダメなんだよ。
そうやって生きていったって、
俺もAも幸せになれない。
俺たちはもっと広い世界を見るべきなんだよ。
そうして、Aは俺じゃない愛おしい誰かに出会う
それが本当の幸せなんだよ。
ダメなんだよ。
俺のためなら何もかも擲てる。
そう思っちゃダメなんだよ。
そんなの幸せじゃないんだよ。
そんな作り物の幸せじゃ、生きていけないんだよ。
だから、俺から離れてよ。
俺がAに縋りついてしまう前に離れてよ。
やっぱりAがいなきゃダメだ。
その事実に気が付いてしまう前に、離れてよ。
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作者名：羽瑠 | 作成日時：2023年2月17日 23時
