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それから数十時間後、
沖で見つかったあなたは、
青白い顔をしているのに、
何故かひどく幸せそうに笑っていた。
何十時間も水に浸かっていたはずなのに、
ふやけることもなく、ただいつも通りのあなたのままで
心臓が止まっている以外はいつものあなたのままで、
俺たちの元へと戻ってきた。
｢阿部ちゃん…｣
酷く掠れた声が胸の奥から零れて、
息をしないあなたへと降りかかる。
｢なんでよ…なんで…｣
そうやって掴んだ肩が痛いぐらいに冷たくて、
揺すっても何も言わないあなたが苦しくて、
視界が揺れて、世界が歪んでいく。
｢佐久間…｣
ただ、苦しそうに俺を呼ぶ声が響いて、
大きな胸に抱きしめられた。
それが着火剤になったかのように、
わけもわからず泣き叫んだ。
ただ、大切な親友の名前を呼び続けた。
ぐらりぐらりと世界が揺れているような気がして、
苦しくて、悲しくて、寂しくて
視界が徐々に黒に侵されて、
そうして、闇へと溶けた。
その後、どうやって過ごしていたのか覚えていない。
気がついた時には、眩いフラッシュの渦の中で、
大きな写真の中で微笑むあなたを見つめていた。
｢阿部ちゃんは…本当に優しくて…
いつだって、Snow Manの、ために…って｣
涙をいっぱいに溜めたふっかの言葉が揺れる。
途切れ途切れになった言葉が嗚咽に変わる。
またフラッシュが焚かれる。
光に埋もれていく世界を
どこか他人事のように眺めていた。
いつの間にか葬儀は終わったのか、
出口へと人がごった返している。
その中で、俺らだけは何かに縛り付けられたかのように
動くことも出来ずに大きな写真の前に立ち尽くしていた
｢……深澤くんたち…｣
ふわりとした声が響く。
｢あ、阿部ちゃんのお母さん…｣
｢…お願いがあるんだけど、聞いてくれる？…｣
｢…はい｣
｢…亮ちゃんの…亮平の遺品整理をしてほしいの……｣
''きっとみんながしてくれた方が亮平は喜ぶから''
阿部ちゃんによく似た大きな瞳に涙を溜めながら微笑んだ
お母さんから、合鍵を預かって。
俺たちは阿部ちゃんが暮らしてきた部屋に訪れた。
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作者名：羽瑠 | 作成日時：2023年2月17日 23時
