波に絶つ。 1 ×△ ページ13
ab side
｢俺さ、海好きなんだよね｣
｢うん、わかるよ。海好きそうだもん｣
サーフボードとか華麗に乗りこなして
ビーチバレーで活躍して
そんな姿が目に浮かぶもん。
｢最期は海で死にたいなって…笑
なんかさ、海に沈んで死ねたら、
自分自身も海の1部になれそうじゃん？笑｣
｢なにそれ笑笑｣
笑ってごめんね。
今なら、あなたの言っていることの全てが理解できるよ
海に包まれて死ねたら、自分自身も海の1部になって、
行きたい場所に自由に行けるような気がする。
何もかもを認めてもらえる素敵な世界に
辿り着けるような気がする。
あなたの元へ行けるような気がする。
｢もしさ、終わりを選ぶとしたら一緒に沈んでくれる？｣
｢うん、いいよ｣
｢じゃあ約束ね。指切りしよ｣
｢えー笑 子どもみたい笑｣
｢いいじゃん、ほらー｣
｢もー、指切りなんてしなくてもいいと思うけどなぁ｣
『指切りげんまん
. 嘘ついたら針千本飲ます
. 指切った 』
防波堤に波音が響く。
ゆらりゆらりと揺れる。
飛沫が上がる。
灰色を黒に染めあげていく。
ねぇ、蓮。
もしも俺も終わりを選ぶとしたら、
一緒に選んでくれますか？
この答えを知っている人だけがここにはいない。
ただ、秋には似つかない生暖かい空気が、
押しては引いていく波に合わせるように頬を撫でるだけ
指切りげんまんをした小指がドクドクと波打つ。
ほら指切りなんてするもんじゃない。
俺も指が痛いし、蓮は針千本だよ。
いいことなんて何ひとつもないじゃん。
『正論パンチが痛い笑』
あなたの声が聞こえた気がして、ゆっくりと瞼を閉じる
そうして、あなたを描く。
｢…ごめん、ね…守れそうも…ない、や…｣
守りたかった、なんてそんなのは言い訳だよ。
そんな言葉聞きたくない。
｢…ごめんね…最期、まで…ごめん…｣
最期だなんて泣かないで。
誘われるように、俺の頬にも涙が伝うから。
最期ならば、笑顔で終わりたいんだよ。
大好きだよって、笑って手を繋いで終わりたいんだよ
｢…りょーへ、…じゃあね…｣
終わりを告ぐその声が消えればいいなんて、
あなたと沈みたいなんて、
こんな俺が望んだせいなのでしょうか。
だからあなたは約束を破って1人で終わりを迎えたの？
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作者名：羽瑠 | 作成日時：2023年2月17日 23時
