特等席で笑わせて 1 # ページ11
your side
｢俺、彼女出来た｣
｢は？｣
｢だから彼女出来た｣
｢…そ、うなんだ…｣
｢あれ？おめでとうって言ってくれねぇの？笑｣
｢いや、おめでとうなんだけど、急すぎて。
だってそんな素振り少しもなかったじゃん｣
｢嘘！？笑 俺がめっちゃアタックしてたんだけど笑｣
意外だね。
そう言った私は本当に笑えていただろうか。
辰哉とは、産まれた時から、
まるで兄妹のように育ってきた。
私の隣にはいつでも辰哉がいて、
辰哉の隣にはいつでも私がいる。
それが当たり前だった。
いつからだろう。
辰哉のことを幼なじみとしてではなく
想うようになったのは。
この想いは、
''大好き''
そんな言葉で表せるほど、安い想いじゃなくて。
''隣にいられればそれでいい''
そう想うに足るほど、熱い想い。
''幼なじみ''
この関係に甘えて、どのぐらいの時間が経っただろう。
''幼なじみ''
その言葉は私を辰哉の隣にいることを許してくれる、
魔法みたいだ。
けれど、そんなものは永遠ではなくて。
この関係が特別だと思っていたのは
きっと私だけだったのだ。
｢今までみたいに会えなくなるかも。ごめんな｣
そうやって私の頭を撫でないで。
そんな顔されたら、私は物分りのいい
''ただの''幼なじみを演じなきゃいけないでしょ。
｢そんな気にしなくていいよ。ただの幼なじみなんだから
彼女のこと大切にしてあげなよ｣
そうやって笑えば、辰哉も嬉しそうに笑うから
きっとこれが正解なんだ。
そうやって言い聞かせるの。
｢ただの幼なじみなんかじゃないよ。
俺にとってAは大切な人だよ｣
｢何それ笑 大切な人っていうのは彼女に使いなよ！笑｣
｢確かにそうだな笑｣
''大切な人''
その言葉を違う意味で使ってもらえる彼女は
きっと幸せだろうな。
どんなに同じ言葉をかけてもらっても、
私と彼女では雲泥の差があって。
どれほど願おうと、どれほど望もうと、
私には貰えようのない想い。
それならいっそ、優しくなどしてくれなくていいのに
『もう一生会わないから。もう一生話さないから。』
そう言ってくれればどんなに楽だろう。
そうすればこんなに心を悩ませることもないのに。
そうすれば、私だって前を向けるのに。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 59人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：羽瑠 | 作成日時：2023年2月17日 23時
