9話 ページ10
それからは、緊張が解れ、会話が途切れることなく話した。
お互い、まだ知らないことだらけだったので、これを機に好きな食べものや好きなヒーロー、誕生日など自分のプロフィールを答え合った。
特に印象に残ったのが切島くんの中学時代のことだ。
常に明るく、男らしい切島くんからは想像がつかないような過去だった。
私はそれを黙って聞くことしかできなかった。
｢石原は？中学どうだった？｣
｢あ、えっと…｣
中学では良い思い出は全くと言っていいほどない。
中学では、というか、小学校や幼稚園でも良い思い出がない。
｢嫌なら言わなくてもいいんだぜ？自分の過去を話すのが辛い人だっているんだしな｣
困っている私に、切島くんはそう言ってくれた。
私はふるふると首を横に振った。
｢い、言うよ…言いたい…！切島くんだって、
辛いはずなのに私に話してくれたんだし、私も話したい！
切島くんに、聞いて欲しい…！｣
｢おう！俺で良ければ聞いてやる！
でも、無理はすんなよ？｣
｢うん…！｣
私は烏龍茶を一口飲んでから、口を開いた。
｢あのね、私、個性が上手く使えないの。目を合わせた人を石に変えちゃう個性なんだけど、その所為で沢山の人を傷つけてしまったから、友達もできずにずっと虐められてきた。
中学校でも、小学校でも、幼稚園でも。
個性暴走しちゃうのも怖いし、虐められるのも怖いから、あんまり学校通えなかった…｣
切島くんは、私が切島くんの話を聞いていたときのように、黙って私の話を聞いていた。
＊＊＊
大して暗くも重くもない、ありきたりな夢主の過去()
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作者名：オドントライト | 作成日時：2019年5月18日 19時
