第十一の怪 放課後の談 ページ37
深夜
屋上の柵の上を、綱渡りのように歩く秋哉
その横を並んで歩く花子くん
「気にしてる？」
不意に投げかけられた声
暁色が、こっちを見た
「…ちょっとだけ」
しかし、すぐに逸らされる
「…ただちょっと
死にたい奴が生きて
生きたい奴が死ぬ世界は
…ちょっと、疲れるなぁって
ただそれだけ」
目を合わせずに、秋哉はそれだけを口にした
「…少年と会う前に、あの子がつかさと会ってたなら
秋哉にはどうしようもなかったよ
中等部の昇降口なんか、行かないデショ」
「…わかってるけどさ
…あの子にも、俺にとっての冬也や花子がいたんなら
…そしたら、何か変わってたのかなって」
「…ふぅん」
…花子くんも、それだけを返した
しばし、無言
「うわっ」
ぐい、と花子くんは秋哉の手をひく
バランスを崩して突っ込んできた秋哉を胸の中に抱え込み、大事な宝物を扱うように
つよく、つよく抱き締めた
「…羨ましいって思ったでしょ」
花子くんの、言葉
「あのミツバって子に、俺の手で包丁を刺した時
羨ましいなぁって
自分もそうなりたいなぁって
思ったでしょ」
「…まあ…な。」
ふ、ショウジキ。
赤茶の長い髪を、花子くんの指が通る
「…生きている間できなかったことは、死んだ後にもできない…だっけ
うまく言ったもんだよな」
秋哉は眠りたかったのだ
永眠すら望む程に
にも関わらず、死して怪異と化した彼は、未だ眠れた試しがない
それはきっとこれからも
睡眠を必要としない怪異達と話せるのは楽しいが、やはり眠りたいものは眠りたい
永きに渡る渇望に嘆息すれば、それは存外重かった
「秋哉と夜更かしすんのたのしーけどネ、俺は」
「俺も深夜に駄弁るの楽しいけどさぁ…寝たいんよ俺は…」
優しく髪を撫で続ける花子くんに、秋哉はぐりぐりと頭を押し付ける
「…ミツバはちゃんと
「…大丈夫じゃない？きっと」
花子くんから体を離し、秋哉はすいと天を仰いだ
満天の星空に、秋哉は薄く笑みを浮かべる
「…なあ花子
黙祷しようぜ
死んでる俺達が、死んだあの子に」
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イヨリ(プロフ) - 悠奈さん» コメントありがとうございます！好きになっていただけて嬉しいです！暑いですが頑張ります！ (2021年8月7日 12時) (
レス) id: 0c53510547 (このIDを非表示/違反報告)
悠奈(プロフ) - めっっちゃ好きです！！お身体に気をつけて頑張ってください！ (2021年8月7日 8時) (レス) id: 034afccae7 (このIDを非表示/違反報告)
イヨリ(プロフ) - saraさん» コメントありがとうございます！好きになっていただけて嬉しいです！頑張ります！ (2021年8月4日 17時) (レス) id: 0c53510547 (このIDを非表示/違反報告)
sara - ｱｯ…好きです！更新心待ちにしております！ (2021年8月4日 13時) (レス) id: 856cffb9ea (このIDを非表示/違反報告)
イヨリ(プロフ) - 匿名希望の〇〇:ネロ・クラウディアさん» コメントありがとうございます！最近未熟な作者のせいで更新が遅れがちですが、読んでいただけて嬉しいです！頑張ります！ (2021年8月3日 15時) (レス) id: 0c53510547 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：イヨリ | 作成日時：2021年7月10日 21時
