もしも〜決意・side鬼灯〜 ページ49
こんこんこん
鬼灯が部屋で過ごしていると、耳に馴染んだノックの音が聞こえる
鬼「どうぞ」
答えると、うっすらと開いた扉の隙間からAが恐る恐る顔を覗かせた
￣￣￣￣￣￣￣￣￣
官吏と恋人という立場の間で
行きたい気持ちと残りたい気持ちの間で
揺れ動くAに寄り添い支えたい思いもあったが
二つの立場の間で揺れるのは鬼灯とて同じで
頭の中でギリシャとの友好条約について考える一方
油断すればAの細い身体を抱き締めて「行くな」と言ってしまいそうにもなる
仕事外で二人きりになってしまえば、本音が漏れてしまいそうなのはお互い様で
いつしか二人の日常になっていた、終業後に共に過ごすという習慣も
交換研修の話しが出てからは、どちらからともなく控えるようになっていた
￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣
――やはり、来ましたか‥
目の下の隈は相変わらずだったが、迷いの消えたAの顔を見て
今夜はここに来るような予感はしていた
いつものようにベッドに並んで腰かける
いつもならこの場所で楽しそうに色々と話すAは、しばらく俯いたままだ
鬼灯は膝の上で固く握り締められたAの拳に、自らの掌をそっと重ねた
鬼「‥大丈夫ですよ、話してください」
何度か深呼吸を繰り返した後、Aが口を開く
あ「鬼灯さん‥私‥‥」
鬼「はい」
あ「少しだけ、ギリシャで勉強‥‥してきますね‥」
顔を上げたAの瞳が、真っ直ぐに鬼灯を捉える
鬼「解りました‥Aなら、そう言うと思っていましたよ」
あ「‥ごめんなさいっ‥‥」
鬼「謝る必要など、ありませんよ‥‥よく決心しましたね」
こちらを見つめるAの大きな瞳からは涙が溢れる
柔らかな頬を濡らした涙を指先で拭ってから、その細い身体を抱きしめた
鬼「泣かないで、下さい‥」
あ「‥だって‥‥」
鬼「たった半年‥鬼の寿命を考えたら一瞬ですよ。
期間満了時にAがあっちに残りたいなんて言っても、引きずってでも連れ戻しますからね！覚悟しておいて下さい‥」
あ「戻りたくないなんて‥言うわけないですよ」
鬼「それは行ってみないと解りませんよ。ケルベロスが可愛いから帰りたくない‥とか言うかもしれないじゃないですか」
あ「鬼灯さん‥ケルベロスに負けるんですか？」
鬼「いや、負ける気はないですけど‥ものの例えですよ！」
抱き締めた胸の中で
Aがふわりと笑う気配を感じた
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百花(プロフ) - まだらもようさん» ありがとうございます！忙しさに負けず更新がんばります(^-^ゞ (2018年11月8日 7時) (
レス) id: 9123add313 (このIDを非表示/違反報告)
まだらもよう - ヤバイ見てて楽しいテンション上がる楽しい作品をありがとうです！ (2018年11月7日 23時) (レス) id: d426066ad9 (このIDを非表示/違反報告)
百花(プロフ) - カコさん» まさかこの作品に癒し効果があるとは！素敵コメントに私も癒されました(*´ω｀*) (2018年10月17日 21時) (レス) id: 9123add313 (このIDを非表示/違反報告)
カコ - 癒される・・・荒んだ心がほぐれていく・・・ (2018年10月17日 21時) (レス) id: 87181eb08c (このIDを非表示/違反報告)
百花(プロフ) - 泪さん» 楽しんでいただけて嬉しいです(*^_^*)これからもよろしくお願いします！ (2018年7月25日 18時) (レス) id: 9123add313 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：百花 | 作成日時：2018年6月17日 7時
