地獄の沙汰も貴方しだい〜短編集〜【鬼灯の冷徹】

もしも〜通達は突然に〜 ページ46

恋人期間:恋人〜夫婦までの間に《もしも二人が遠距離になったら》シリーズ

‥‥‥‥‥‥‥‥

あ「おはようございます！」


いつものように部屋を出て、いつものように法廷の扉を開く


閻「‥Aくん」

鬼「‥‥おはようございます」


少し慌てた様子の閻魔大王

眉間にシワを寄せた鬼灯

今日の朝の法廷の雰囲気は、いつもとは少し違う


あ「何か、ありましたか？」


困り顔の閻魔大王に、一枚の手紙を差し出された

その手紙には、まるで握りしめたような皺がよっている


あ「交換‥研修‥‥」


それはギリシャの冥府を治めるハデスから届いた物で
日本とギリシャの親睦と相互理解を深めるために交換研修をおこなわないか、という内容である


閻「この話しを受けるとなれば、ギリシャに行くのはAくんになると思う」

あ「‥‥期間は、どのくらいになりますか？」

鬼「こちらとしても、貴女は貴重な人材ですので‥期間は半年と区切ります」

閻「そういう話しがあるってだけで、強制はしないよ」


閻魔大王は、相変わらず困った様な顔をしながら
鬼灯とAの間で視線を揺らした


鬼灯さんは、どう思っているんだろう


隣に立つ恋人の横顔は、仕事に私情は挟むまいと
いつも以上に冷静に振る舞っているようにも見えた

Aの視線に気付いた鬼灯が口を開く


鬼「この件についての決断はAに一任します。
Aが行くのならもちろん了承しますし、行かないのであれば、これまで通り私の下で働いてもらいます」

あ「私が‥決める‥‥」

鬼「概要については先程確認しましたが、獄卒としても官吏としても良い勉強にはなると思います」


鬼灯の言うとおり、他国の地獄の日常の業務までしっかりと学べる機会など滅多にない

それが自分の価値を高めて鬼灯や大王、ここで働く獄卒達の役に立てると考えれば、これは好機である

しかし、この話しを承諾すれば少なくとも半年間は日本へは戻れない


‥‥半年‥


鬼になった時から今に至るまで、そんなにも鬼灯の下から離れた事はない


頭の中を色々な感情が駆け巡る


不意に鬼灯の大きな掌が頭に置かれた


鬼「すぐに返事をしなければならない訳ではありません。Aに半月考える時間を与えます。
どんな決断でも私はちゃんと受け入れますので‥後悔の無いように良く考えてみて下さい」


顔を上げると鬼灯と視線が絡む

その顔は少しだけ切な気だ

それをごまかすように鬼灯は、Aの頭を少し乱暴に撫でた

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