幸せ者って、きっと俺のこと。 (ページ4)

今日:1 hit、昨日:3 hit、合計:36,366 hit

ただいまのキスはきっと(2) ページ4

.

ミツの可愛らしい嫉妬に、ラインじゃなく直接話したい欲求が抑えきれなくなった俺は、賭けに出る気持ちで財布を持って立ち上がる。

一瞬だけ、ミツがこっちを見たのが気配でわかった。

「ちょっと喉乾いたから、ジュース買ってくる。玉は何か欲しいものある？」

「別にない」

「ん、わかった」

離れた場所のミツにも聞こえるように、ほんの少し大きな声で言ってから楽屋を出た。

俺が楽屋に置いてある水よりジュースを好むことは玉も知っているから、わざわざ買いに出かけても不思議じゃない。

舞台の台本を読んでいる今なら、玉がついて来ないこともわかってた。

あとは、ミツが俺の誘いに乗ってくれるかどうか。

「…あ、」

待つこと数分。楽屋の扉が開いて、待ち人が顔を覗かせた。

こそこそと辺りを気にしながら俺を探す姿が、何だか親を探す迷子の子どもみたいに見えて、今すぐ抱きしめたい衝動に駆られる。

そんなことしたら殴られるに決まってるから、それを実行するのは妄想の中の俺だけど。

「ミツ、こっちこっち」

「！」

ちょいちょいと手招きして、俺達の楽屋から少し離れた物陰に呼び寄せる。

俺の顔を見た途端ムッとした表情を作って小走りで駆け寄って来たミツがあまりにも可愛かったから、俺は予定を変更して妄想を実行するべく、たまたま空いてた楽屋のドアを開けてミツを押し込んだ。

.