検索窓
今日:1 hit、昨日:4 hit、合計:273,809 hit

PM14:20 特製半熟オムライス(2) ページ10

.



手を振りながら駆け寄ってくるその姿を、店内の女性客が目をハートにしながら見ていることに、この天然くんは全く気付いてない。

<TAMAMORI>のネームプレートとあどけない笑顔がキラリと光るたびに、周りの女性達が溶けてスライムと化していくのがおもしろくて、俺は笑いを噛み殺しながら手を振り返した。




「ミツ、今日は来ないのかと思ったよ。なんで今日は遅かったの?ニカは一緒じゃないの?」

「ちょっと用事できたから、休憩の時間変えてもらったんだよ。だから一人」

「そうだったんだー。この荷物は?」

「これがその用事。」

「?」



俺の答えに不思議そうな顔をして紙袋を覗き込んだ玉は、次の瞬間「うわぁ…」と全てを悟った顔でげんなりした。きっと、あのデカ目の女の子と目が合ったんだろうな。



「それよりお前、今仕事中だろ?こんなとこでのんびりしてていいの?」

「あぁ、それなら大丈夫。ミツが来たから休憩下さいって店長に言ってきた」

「相変わらず自由な店だな…」



ここのシェフでもある店長さんは滅多にフロアには出て来ない人らしく、俺もまだ会ったことがない。

元々自由奔放な玉を野放しにしているあたり、とてつもなく器の大きな人か、もしくはとんでもない変わり者のどちらかだと、俺は踏んでいる。




「そういえばさ、今日うちに雑誌の人が来たんだよ」

「雑誌の人って、出版社?」

「そう。うちの店を取材したいんだってー」



俺の向かいに座って、俺のために持ってきてくれたはずの水を勝手に飲みながら、他人事のように話す玉。

出版社の人が来たことにさほど驚いてる様子がないのは、この店にとってそういうことが初めてじゃないからだろう。



「今度はどこの雑誌が来たの?」

「えーっとね…確か名刺が……あ、あった」



これこれ〜、と言って玉が見せてきた名刺には、めちゃくちゃ有名な女性ファッション誌の名前が書かれていて、意外なその名前に内心驚いた。

てっきり、カフェの専門誌とか、そういうのだと思ってたから。

まぁ、これだけイケメン揃いの店なんだから、女性ファッション誌に目を付けられても不思議じゃないよな。


でも……



.

PM14:20 特製半熟オムライス(3)→←PM14:20 特製半熟オムライス



目次へ作品を作る
他の作品を探す

おもしろ度を投票
( ← 頑張って!面白い!→ )

点数: 10.0/10 (290 票)

この小説をお気に入り追加 (しおり) 登録すれば後で更新された順に見れます
574人がお気に入り
設定タグ:総受け , 藤北 , 北藤
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告

作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ

作者名:いちはら | 作成日時:2015年12月20日 19時

パスワード: (注) 他の人が作った物への荒らし行為は犯罪です。
発覚した場合、即刻通報します。