PM12:40 コミックス/少年誌(2) ページ7
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「あーっ!これの新刊もう出てたの!?」
新刊コーナーの漫画の棚に本を補充する俺の後ろを当然のように付いてきた大型犬は、補充したばかりの本を片っ端から取り出しては、いちいち大声を上げる。
ちら、とこっちを見た女性客に慌てて頭を下げてから、俺は隣で漫画を大人買いしようとしているバカを睨み付けた。
「今度騒いだら出禁にするからな」
「あぁっ、それだけはヤメテ!静かにするから!」
口ではそう言いつつも、ごめんね、許してと謝るその顔は相変わらずヘラヘラしていて、俺の話を聞く気があるのかないのか…。
手元に積み上げた本を満足そうに抱える横顔を見て、そういや似たような光景さっきも見たな、と既視感を覚えた。
「…お前、スゲー買い込んでるけど、ちゃんと金持ってきてんの?大丈夫?」
「あ、俺今日財布忘れたから、これ全部取り置きしといて」
「財布持ってきてねーのかよ!!」
金払えないのわかってて買い物するなんて、とんでもねー奴だな!悪意しか感じねー!
…ん?あれ?ってことはまさか…
「さてはお前、今日俺に昼メシ奢ってもらうつもりで来たな?」
「……えぇ〜?何言ってんの、そんなわけないじゃーん!」
「なんだよ今の間は!」
やっぱそうだったんじゃねーか!俺に会いたかったとか言いながら、結局そういうオチか!
怒って立ち去ろうとする俺に後ろから抱きついてきて、会いたかったのはホントだよ!?と縋ってくる大型犬をベリッと剥がして、通りがかりの松島くんに引き渡す。
えっ?何?誰?と戸惑う松島くんに、
「そいつ、ここ出禁にしたから。松島くんもしっかり顔覚えてね」
そう言い放ってレジに向かえば、背後で大型犬の悲しい遠吠えが聞こえた―――。
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作者名:いちはら | 作成日時:2015年12月20日 19時