サタンが家にやってきた! ページ41
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今宵は聖なるクリスマスイブ。
サンタさんが街にやってくる夜だ。
「さんたくろーす いず かーみーん とぅ たーぅんっ」
大好きなクリスマスソングを口ずさみながら、テーブルに今夜のためのご馳走を並べていく。
先週から飾り付けておいた部屋は、キャンドルのオレンジ色に照らされてムードたっぷりだ。
冷やしておいたシャンパンをグラスに注げば、ひとりぼっちのクリスマスイブの始まり。
「…今年も一人だけど、別に寂しくなんかないもんね」
グラスを合わせる相手もいないから、乾杯も無しで一気にシャンパンを煽る。
この童顔のせいで「これシャンパンだよ?シャンメリーじゃないよ?」とからかわれた過去の苦い思い出も、弾ける泡と一緒に飲み込んだ。
彼女いない歴=年齢の俺は、30歳になった今年のクリスマスイブも一人。
先月の合コンで知り合ったメルヘンチック年下女子には、いい雰囲気になったところで童貞がバレて「マジ無理、キモイ」って捨て台詞を吐かれて逃げられた。
30過ぎて童貞の俺は「魔法使い」っていう魅力的なジョブになってるはずなのに、メルヘン女子の心には響かなかったらしい。
「まだ明日があるし、大丈夫…!サンタさんにもちゃんとお願いしたし!」
そう、今日はまだ24日。
明日いきなり彼女ができる可能性だってゼロじゃないから、俺はまだ諦めてはいない。
枕元に用意した靴下の中には、毛筆でしたためた「可愛い彼女がほしいです」って手紙も入れておいた。
あと1週間しかない今年のうちに魔法使いを卒業するには、藁にもサンタさんにも縋る思いなんだ。
どうか、どうか今年こそ…!
「サンタは神様じゃねーっつーの」
「…えっ?」
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作者名:いちはら | 作成日時:2015年12月20日 19時